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眼瞼下垂の手術

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眼瞼下垂の手術

一般に眼瞼下垂の手術には、眼瞼挙筋前転法、眼瞼挙筋腱膜修復法、上眼瞼吊り上げ術、FasaneIla-Servat 法などがある。眼瞼下垂の原因と程度により、手術方法が異なってくる。
挙筋機能が4mm以上であれば眼瞼挙筋前転法の適応になることが多く、挙筋機能が4mm未満であれば上眼瞼吊り上げ術の適応になることが多い。また、眼瞼挙筋前転法、眼瞼挙筋腱膜修復法、上眼瞼吊り上げ術では、通常皮膚切開から行うが、経過と共に傷跡も殆ど目立たなくなる。結膜から切開を行う方法もあるが、手術の操作が煩雑になるため、当院では経皮法を好んで用いている。

外科治療の目標は、眼瞼の位置異常を出来る限り解剖学的に正常な眼瞼を形成して、左右対称な眼瞼にすることである。しかし、先天性眼瞼下垂症などで解剖学的に欠損組織や機能不全がある場合には、眼瞼形成にも限界があることを銘記すべきである。

麻酔

幼少児は全身麻酔で行うが、10歳前後で聞き分けの良い場合は局所麻酔でも可能となり、それ以降の年齢では原則的には局所麻酔で対処できる。全身麻酔では下垂が目立たなくなってしまうことがあるので、術前写真を撮影し、患側に印をつけておくのもよい。

局所麻酔:点眼麻酔後、眼瞼皮膚に1%キシロカインE4-5mlを浸潤麻酔する。局所麻酔による眼瞼挙筋麻痺が生じないように、眼窩隔膜内には局所麻酔を浸潤させないよう注意を払う。

手術方法

眼瞼挙筋腱膜修復法

当院では、老人性眼瞼下垂やコンタクトレンズ眼瞼下垂などに対する眼瞼挙筋腱膜修復術は、好んで眼瞼挙筋tuckingを行い、眼瞼挙筋の裏面を剥離せず、眼瞼挙筋の切除・短縮は行わない。

  1. 上眼瞼の重瞼の位置に皮膚切開を加える。重瞼が明らかでない場合は健側を参考にする。余剰皮膚があって眼瞼下垂を増悪させている場合には、あらかじめ手術直前に皮膚切除範囲を決めておいてから切開して切除する。
  2. 皮膚切開の瞼縁側の皮下組織および眼輪筋を切除して、瞼板を露出する。
  3. 皮膚切開の眉毛側を展開して、瞼板上縁を確認後、眼瞼挙筋腱膜前面を剥離する(結膜側の剥離は行わない)。眼瞼挙筋腱が完全断裂している場合にはMueller筋が露出されるので、これを上行して眼窩隔膜と腱膜を確認する。
  4. 眼瞼挙筋腱膜前面を剥離途中、眼窩隔膜を丁寧に剥離していき、Whitnall靭帯近傍まで露出する。
  5. 露出した眼瞼挙筋前面を瞼板の上1/3位置に2-3箇所固定する。
  6. 閉創する。新たに重瞼を作る場合には、瞼板と直上の眼輪筋を2-3箇所固定する。

眼瞼挙筋前転法

  1. 上眼瞼の重瞼の位置に皮膚切開を加える。重瞼が明らかでない場合は健側を参考にする。余剰皮膚があって眼瞼下垂を増悪させている場合には、あらかじめ手術直前に皮膚切除範囲を決めておいてから切開して切除する。
  2. 皮膚切開の瞼縁側の皮下組織および眼輪筋を切除して、瞼板を露出する。
  3. 皮膚切開の眉毛側を展開して、瞼板上縁を確認後、眼瞼挙筋腱膜裏面を切離・剥離しながら、Mueller筋を眼瞼挙筋側に含めるようにして結膜をできる限り薄く剥離する。次に眼瞼挙筋腱膜前面を剥離する。
  4. 眼瞼挙筋腱膜前面を剥離途中、眼窩隔膜を丁寧に剥離していき、Whitnall靭帯近傍まで露出する。
  5. 露出した眼瞼挙筋腱膜を瞼板の上1/3位置に2-3箇所固定する。症例によっては、Whitnall靭帯を瞼板の上1/3位置に固定して、かつ眼瞼挙筋腱膜を瞼板に追加固定することもある。(即ちWhitnall靭帯による吊り上げ効果を期待するもので、眼瞼挙筋機能が殆ど無い先天性眼瞼下垂症にも用いられることがある。)
  6. 閉創する。新たに重瞼を作る場合には、瞼板と直上の眼輪筋を2-3箇所固定する。

上眼瞼吊り上げ術

  1. 3-4歳以上であれば、大腿外側にある大腿筋膜張筋から十分な移植筋膜を採取する(条件によっては、それ以外の材料として保存筋膜や代替材料も考慮される)。
  2. 眉毛直上に骨膜に到る2-3箇所小切開を行う。
  3. 上眼瞼皮膚の二重ラインに一致して皮膚切開して瞼板を露出する。
  4. 眉毛小切開部位と上眼瞼切開部位との間に皮下トンネルを作成する。
  5. 筋膜(あるいは代替材料)を皮下トンネルに通して、一方は瞼板に固定し、他方を骨膜上の前頭筋に固定する。この際、筋膜を菱形状ループにして固定することもある。
    ※筋膜が緩むことが多く、低矯正になることもあるので、必要に応じて後日再矯正することもある。
  6. 閉創する。患側眼瞼が術後閉眼不全になるので、数日間はテープによる閉眼を行い、その後は点眼や眼軟膏塗布を十分行って、角膜炎の予防を行う必要がある。

FasaneIla-Servat 法

ごく軽度の眼瞼下垂(1-2mm程度)でフェニレフリンテスト陰性の場合には考慮する手術方法である。当院ではこの手術手技は行っていない。
上眼瞼を翻転して、結膜側から瞼板・結膜・眼瞼挙筋筋膜・周囲組織を専用鉗子でクランプし、クランプされた組織を切除後、同部の切除段端を縫合して元に戻す。

術後合併症

機能的、整容的に満足させられるのが理想であるが、限界があることも承知すべきである。

  1. 過矯正あるいは低矯正は再手術が必要になる。
  2. 兎眼(閉眼しても瞼裂が開いている状態)は程度の強い場合は角膜障害になりうる。
  3. 眼瞼後退:眼瞼の開閉運動がうまく出来ないため、下方視において瞼裂開大が著明となる。これは避けられない合併症である。下方視するときは頭部も同時に下げるよう習慣づけさせる。
  4. 術後、睫毛外反や内反が出現することがある。
  5. 稀に、Whitnall靭帯を切断すると、術後乱視を生じることが報告されている。