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ヒアルロン酸

ヒアルロン酸の構造と特性

ヒアルロン酸(以下HA)は一律にくり返す直鎖状のグリコサミノグリカンで、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンから成る2糖が2,000~25,000連なった線状大分子ポリマー構造です[β-1,4-GlcUA-β-1,3-GlcNAc]n(n≧10000)。溶液中でのHAは、伸びたランダムコイル構造をとりますが、各分子間及び分子内の立体的相互作用と自己結合により、絡み合った分子の網目構造も形成して粘弾性を示します。一方、HAの網目構造は細胞外の水分量を制御する浸透圧緩衝剤として働くことと水分の流れに高い抵抗性を持つため、保水能力を発揮します。また、組織内でのHAは他のマトリックス高分子と特異的相互作用により結合して大きな会合体を作り、細胞外マトリックスの重要な構成要素を担っています。最近の研究では、炎症や外傷などによる組織損傷が生じたときには、細胞を修復する機能もあると言われています。

ヒアルロン酸の医学への応用について

ヒアルロン酸の特性を利用して、眼科手術補助剤(白内障手術や全層角膜移植術に使用)、関節機能改善剤(変形性膝関節症、肩関節周囲炎に使用)、癒着防止剤、創傷治癒剤、化粧品などに臨床応用されており、安全性は確立しています。最近では後述のように、しわ治療にも応用されています。

皮膚におけるHA

HAを多く含む組織には、皮膚、眼の硝子体、関節滑液、臍帯などがありますが、特に、皮膚は最も多くHAを含有し、真皮と表皮に約5:1の割合でHAが存在します。真皮は細胞数が少なく、ほとんどが細胞外マトリックスから成るのに対して、表皮は2~3%の組織を除いて角質細胞が満たしているため、角質細胞周囲の細胞外マトリックス中には、最高濃度のHAが存在します。
皮膚におけるHAの代謝は、表皮の角質細胞ではHAを活発に合成・分解し、その半減期は1日以下です。真皮に存在する細胞はHAを活発に合成しますが分解はほとんどしません。真皮中のHAの大部分はリンパ系に流出して、短期間でリンパ腺と肝臓の網内系細胞に捕捉されてライソゾームで分解され、血中に流入するとわずか2~3分の半減期で速やかに代謝されます。

しわに対するヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸は成長と共に減少し、大人の皮膚に含まれるヒアルロン酸量は、赤ちゃんの約1/20と言われています。従って、加齢と共に皮膚の保水能力や弾性が徐々に低下し、皮膚の潤いも衰え、皮膚が弛緩し、しわが生じてきます。このような皮膚にヒアルロン酸を補うことで、皮膚老化防止あるいは皮膚の若返りが期待できます。特に、顔の表情筋によらないしわ(額、眉間、目尻、目の下、鼻唇溝、顎など)や窪みにヒアルロン酸を注入すると、しわが解消して弾力のある若々しい皮膚を取り戻します。また、鼻根部、アゴや唇などのボリュームをつけたい箇所にヒアルロン酸を注入して、整容効果を高めることもできます。

しかし、天然型のヒアルロン酸は数日で急速に分解・吸収されてその効果も失われてしまうので、臨床応用できませんでした。そこで、天然型のヒアルロン酸を化学的に修飾して、生体内で徐々に分解・吸収されるヒアルロン酸が待望され、近年ようやく登場しました。

当院で使用するヒアルロン酸

当院で使用しているヒアルロン酸は、安全性が確立しており、EC加盟国や米国FDAでも認可されているものを使用しています。本製品は、動物材料を使用せずに100%バイオテクノロジーにより生合成されたものです。人により差がありますが、通常のヒアルロン酸は注入後6ヶ月~1年ほどで体内に物質が残ることなく、徐々に分解・吸収されます。従って、効果を持続させるためには定期的な注入が必要になります。
また、アレルギーを起こす可能性も非常に低率です。アレルギー反応の大半は注入部位および周囲組織の腫脹、発赤、圧痛など(稀ににきび様皮疹)で、注入後数日~4週間以内に発生して平均2週間程度続くとされます。

注意事項:

ヒアルロン酸などの注入物に関する注意事項

ヒアルロン酸が注入できない場合
アナフィラキシーアレルギーや複数のアレルギー歴を持つ方には、ヒアルロン酸注入は禁忌です。
炎症や感染(にきび、発疹、皮膚炎など)が認められる部位は、症状が消失するまでヒアルロン酸注入はできません。
妊娠中や授乳中の女性あるいは18歳未満の方への使用は安全性が確立していないので、この治療は行いません。
止血・凝固機能を抑制する薬剤を内服している場合は、注射部位に皮下出血する可能性が増大するので、ヒアルロン酸注入ができないことがあります。
顔面特に口唇に単純疱疹を繰り返しやすい方は、この治療で単純性疱疹が出現することがあります。

異物混入のヒアルロン酸について
ヒアルロン酸はコラーゲンに比べると安全性も高まり最近の主流になりつつありますが、近年、体内に完全に吸収されない混合物(HEMA, PMMA, PAMなど)を含有するヒアルロン酸が流通しています。ヒアルロン酸は吸収されても、分解・吸収されない異物が残存して異物肉芽反応が生じる場合があり、現時点では安全性が確認されていないことから当院では使用しておりません。

コラーゲン注入について

コラーゲンは人間・動物に存在するタンパク質で、皮膚・筋肉・骨など体の構成要素の一部です。コラーゲン繊維は、織物の繊維のように織り込まれていて、その中で新しい細胞が成長する仕組みになっています。皮膚のコラーゲンは、質感・弾力・形状などを決定する大切な要素です。

注入用コラーゲンは、減ってしまった皮膚内のコラーゲン組織を補充するものです。しかし、コラーゲンは動物由来タンパク原料であるため、皮内検査を行い、1ヶ月間ほどアレルギーの有無を検査しなければなりません。注入後の効果持続もヒアルロン酸よりも短いとされています。

また、従来のコラーゲン製剤(ザイダーム、ザイプラスト)は牛由来であるため、事前にアレルギーに対する皮内テストが必要で、その陽性率も3%前後です。また、BSE(狂牛病)問題でその使用を控える傾向にあります。ごく最近ではヒトの培養皮膚から得られたコラーゲンを精製して作られたコスモダームとコスモプラストが、2003年米国FDAの承認を得て流通し始めました。この製剤の最大の特徴はヒト由来のコラーゲンであるため、アレルギーテストが不要反応であることです。しかし、長期経過の確認や安全性については未だ明確でないため、当院では現段階での導入は考えておりません。

治療の流れ

1.カウンセリング

消したいしわ、あるいはボリュームをつけたい部位についてご相談し、注入部位を決定します。

2.洗顔して化粧を完全に落とします。
3.ヒアルロン酸注入

注入部位にマーキング後、ヒアルロン酸を専用注射針でしわに注入していきます。通常痛みは自制範囲内ですが、必要に応じて麻酔テープを貼って治療に備えます。
処置直後、処置部位に軽度の発赤、腫脹、圧痛、および痒みなどを生じることがありますが、これは通常認められる所見で、数日以内に消褪します。

1回目の注入で期待された効果が少ない場合は、約2週間以後に再来院して追加注入することもあります。また、ボトックスとヒアルロン酸の併用により、さらに良い効果が得られることもあります。
処置後6時間後より化粧や洗顔は可能ですが、注入部位を安易に揉まないでください。
鼻筋への注入処置後は、当日のみ眼鏡をかけないようにご注意ください。また、口唇部への注入後の腫脹は1週間ほど続くことがありますが、最終的には消失します。
当日から入浴や運動も可能ですが、控えめにしてください。
注入部位は初期の腫脹や発赤が消失するまでは遮光をすること、ならびに極端な高温・寒冷に暴露しないよう注意してください。