ツツガムシ病

ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushiを保有するツツガムシの幼虫に刺されて5-14日後に、発熱、刺し口、全身の紅斑の3主徴を伴って発症する感染症で、ヒトからヒトへの伝播はありません。また、この病原体は真正のRickettsia属とは種々異なった性状を持っています。

感染経路

この病原体の自然界における宿主はツツガムシで、草叢や林の土の中に生息しています。ツツガムシの幼虫は成長過程で一度地表に出て野ねずみなどの動物に吸着して組織液を吸いますが、この病原体を保有する幼虫(幼虫全体の0.1-3%で、経卵巣垂直感染で病原体を継代保有している場合のみ)から感染します。

疫学状況

1970年代を境に、夏に東北から北陸地方の河川領域で発症していたアカツツガムシによる古典型に代わり、秋から春にかけて発症する新型が急増し、北海道を除く各都道府県で報告されています。我国以外にも広くアジアやインドに分布し、とりわけ韓国からの報告が多い。新型を媒介するツツガムシは、殆どがフトゲツツガムシかタテツツガムシです。そのうち、フトゲツツガムシは秋と春の二峰性に長野県以北の寒冷地で散発性に発生する場合や、患者が多い地域での非流行期の発症の場合に主な媒介になっていると考えられ、タテツツガムシは温暖な地域で集中的に主に秋から冬にかけて多数流行する場合の主な媒介になっていると考えられています。
臨床症状
病原体を保有する幼虫に刺され6時間以上吸着されると、病原体は刺し口局所で増殖した後、所属リンパ節、さらには血行性に全身に散布され、血管内皮細胞内で増殖します。5-14日の潜伏期の後、全身倦怠感、発熱(38-40℃)、頭痛、悪寒、食欲不振、関節痛、筋痛、結膜充血、咽頭発赤、下痢、嘔吐などを伴い、体幹を中心に上肢や大腿などまでに目立つ紅斑を生じます。初期には紅斑は赤みが強く、次第に暗赤色調になり、バラ疹ともいわれる中心部で色調が濃く辺縁が薄いので、境界がぼけたような発疹となります。刺し口は殆どの例でみられるが自覚症状が無いことも多い。刺し口は徐々に水疱、膿疱を経て潰瘍になり、中央部位は黒褐色の痂皮で覆われ、周囲に発赤と腫脹を認めます。刺し口近傍の所属リンパ節の腫脹や圧痛、全身のリンパ節腫脹が認められることが多いです。予後は一般には良好ですが、7病日以後になり治療が遅れれば、脳脊髄膜炎、間質性肺炎、肝障害、ARDS、DIC、多臓器不全により死亡することもあります。
検査および診断
末梢血で白血球減少、核左方移動、異型リンパ球出現、血小板減少、LDH,GOT,GPTの上昇、CRPや血沈の上昇がしばしば認められ、蛋白尿を認めることも多いです。 確定診断には、間接蛍光抗体法などによる血清抗体価が用いられれ、IgMやIgG抗体価のペア血清で有意な上昇があれば確定する。また、検査する場合は、出来るだけ多くの血清型の亜型を調べるべきである。また、末梢血からのOrientia tsutsugamushi分離やPCRによるそのDNA検出なども利用されます。

治療

ミノサイクリンあるいはドキシサイクリン(200mg/日)を内服あるいは点滴で治療すると、1-3日で解熱する。1週間で治癒することが多いが、再発することがありうるので、10-14日内服します。小児や妊婦では重症例には使用はやむを得ないが、アジスロマイシンも考慮してよいとの報告もあります。

予防

現在のところ、ワクチンはありません。本症の流行時期や多発地域の林や草叢には立ち入らないように注意することが重要です。また、殆どは戸外での感染と考えられるため、肌を露出しない、袖口をきちんと縛る、出来れば繋ぎの衣服を着て、むやみに腰掛けたり、衣服を脱いで放置しない。帰宅後すぐ入浴して頭皮を含めて全身を洗うと同時に衣類を洗濯するなども必要です。

執筆:2010.1

▲PageTop

ページトップに戻る