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手湿疹(主婦湿疹)

本症は水仕事などで手指にある皮脂膜が除去されてしまうため、角質にある水分が蒸発して乾燥化してしまい、その後角質バリアが徐々に破綻して、落屑・角質硬化・亀裂・指紋消失などの症状が併発してきます。炎症を伴うようになると、掻痒のある紅斑や丘疹、あるいは小水疱や苔癬化を認めることもあり、このようになると手掌側のみならず手背側にも病変が及びます。
日常頻繁に遭遇する疾患ですが、慢性経過を辿り再燃を繰り返すため、治療に難渋する疾患の一つです。
頻回に手で水や洗剤・漂白剤などを扱う主婦・美容師・飲食店員・清掃員などが罹患しやすく、また、書類・紙幣・ダンボールなどの紙を扱う仕事でも皮脂が奪われて発症することもあります。
また、手は色々な環境物質との接触が多いことから、刺激物質(金属、薬物、植物、染毛剤、ゴム、食品、香辛料など)によって皮疹が誘発されることもありますが、原因を特定することは容易ではありません。この他にも、多汗症やアトピー性皮膚炎などが本症の発症に関与していることがあります。
指先端から皮膚乾燥と亀裂症状が始まり、手掌に範囲が進行していく進行性指掌角皮症(keratodermia tylodes palmarisprogressiva)もあり、アトピー性素因のある患者に多いです。

予防

日常生活において、水仕事などで手の皮脂を奪われないようにすることと、機械的刺激を避けることが重要です。手を使わなければよくなりますが、実際には非常に困難なことです。現実的な予防は、水仕事などの時には、手を保護するために使い捨て家庭用手袋(塩化ビニルやポリエステル製)を使用したり、綿手袋をしてからその上にゴム手袋や使い捨て手袋を着用することを心がけるようにすることです。症状がほとんどなくなっても素手で洗剤や漂白剤を扱わないように注意して下さい。水仕事を減らすために、家事の分担や自動食器洗い機の購入など考えるのも良いかもしれません。「面倒くさい」「仕事にならない」「感触が無く食器を壊す」などの理由で手袋の使用を怠ると、手湿疹が悪化することを肝に銘じて辛抱強く励行しましょう。

治療

手湿疹の症状が生じた場合は、治療しながら日常生活や仕事を続けざるを得ません。 尿素軟膏(パスタロンS)、ヘパリン類似物質(ヒル ドイドソフトなど)、ビタミンA油(ザーネ軟膏)、サリチル酸ワセリン軟膏などの保湿剤で頻繁に使用して、手の皮膚表面に脂の膜を作り水分を保ち、角質を柔らかくします。重要な点は常に外用薬が皮膚に塗布されている状態を維持することです。 炎症や紅斑などが強い場合はステロイド外用剤が必要で、掻痒の強いときは抗アレルギー剤の内服を行います。 手指に亀裂を生じた場合は、ステロイド含有テープ剤を亀裂部に貼り、剥がれやすい場合はテープなどで補強します。また、ステロイド剤を薄く塗った上にリント布に厚く伸ばした亜鉛華軟膏(サトウザルベ)を貼る方法もあります。亀裂部にカットバンを貼っても、過剰の水分が閉じ込められて角質はふやけてしまい、逆に皮脂膜が消失して症状を悪化させるので、止めましょう。 爪周囲に炎症が及ぶと爪に凸凹変形や色・ツヤも悪化するので、保湿剤やステロイド外用は欠かせません。

外用剤が手の皮膚に浸透しやすくさせるために、15-20分程度ぬるま湯をはった桶に手をつけたままにして、ふやかせるようにして下さい。その後に手早く水分をふき取り、外用剤を直ちに塗布します。症状が改善してきたら、ぬるま湯につけている時間を短縮して、外用剤を塗布し、さらに改善してきたら、手洗いした後に外用剤を塗布して下さい。

執筆:2011.2