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脂肪萎縮症

脂肪萎縮症(lipoatrophy)


本症は、先天的(常染色体劣性遺伝)あるいは後天的に、脂肪組織が全身あるいは部分的に顕著な消失・減少あるいは萎縮することでさまざまな症状を引き起こす、比較的稀な疾患です。尚、部分的脂肪萎縮では、一部が減少した分,別の部位に肥大を起こす代償性変化が認められます。
出生後から幼児期、小児期あるいは遅くとも思春期までに発症することが多いとされています。皮下脂肪組織の欠落あるいは萎縮は容貌や体型などの外見からも顕著です。思春期以降の成長完了後は、これらの症状が著明になり、時間経過と共に腎臓や眼網膜などに糖尿病(脂肪萎縮性糖尿病)症状を呈したり、高脂血症、脂肪肝もよく認められます。この他にも、性ホルモンや生殖機能の異常、異常な食欲、発汗や体温上昇、知的障害、肥大型心筋症をはじめとする臓器腫大、思春期早発症や多毛症、黒皮症などが見られることがあります。
後天性脂肪萎縮症の原因は、何らかの感染症(麻疹や水痘など)あるいは免疫疾患に罹患後に発症した例が多いため、免疫機能異常との関連が指摘されています。この他、エイズ治療に用いられる薬剤により脂肪萎縮症が引き起こされることがわかっており、欧米ではこれによる脂肪萎縮症の患者が増えています。
先天性脂肪萎縮症の原因となる遺伝子異常はいくつか報告されていますが、それらの遺伝子異常が脂肪組織の欠落、萎縮を起こす機序については未だ解明されていません。
ごく最近、脂肪萎縮症では脂肪組織から分泌されるホルモンであるレプチンが欠乏していること、レプチンの補充が脂肪萎縮症に合併する糖尿病、脂質異常、脂肪肝などを劇的に改善することが証明され、レプチン補充療法により脂肪萎縮症患者の予後は大きく改善するものと期待されています。

執筆:2011.1