Laugier-Hunziker-Baran症候群
本症候群は後天性に口唇・口腔粘膜の色素斑と指趾尖部の爪甲色素線条を高頻度に併発する、稀な原因不明の非遺伝性疾患です。時に肛門粘膜にも色素斑を認めることもあります。また、本症候群は他臓器病変を伴わず、悪性変化もしません。若年成人から壮年期ごろに発症することが多いですが、男女差は無いと考えられています。
症状
口腔内の色素斑は、特に頬粘膜に出現することが多いですが、口唇粘膜、歯肉、舌、口蓋にも生じることもあります。色素斑は表面平滑で茶褐色から黒色調、円形・網目状・線状病変などを呈し、徐々に出現して消失することは無いと考えられています。また、約5mm前後の単発性あるいは多発性で癒合することもあり、境界が明瞭のときも不明瞭のときもあります。
指趾尖部の爪甲色素線条は本症候群の60%に生じるとされ、消退することはありません。
1爪甲に1色素線条(1-8mm幅)、1爪甲に2色素線条(各々1-8mm幅で、両外側に多い)、爪甲の半分に色素線条、爪甲全体に色素線条の4タイプが報告されています。時に、爪甲基部や爪囲に出現することがあり、悪性黒色腫との鑑別が困難なことがあります。
尚、本症候群は粘膜のみではなく皮膚にも同様の症状が出現することがあり、頚部、胸郭、腹部、指背側や側面、掌蹠、外陰部、会陰・肛囲に認めることもあります。
鑑別疾患
下記のような鑑別疾患があるため、除外診断する必要があります。
Peutz-Jeghers 症候群:遺伝性や消化管ポリポーシスを認めますが、皮膚症状では爪甲の色素線条は認めず、口蓋、舌に口腔内色素斑を認めません。
Addison病:内分泌異常による全身症状を認め、外陰部や腋窩・臍囲にも色素沈着を認めることが多いです。
Albright 症候群:生後直後から生後間もなくより発症し、色素斑の分布は片側性で線状・帯状配列をとることが多く、骨病変なども伴います。
labial melanotic macule :比較的若年者の口唇に生じることが多く、通常単発であり加齢に伴う変化と考えられています。
この他にも、薬剤性色素沈着、ヘモクロマトーシス、膠原病、扁平苔癬、悪性黒色腫などとの鑑別も考慮します。
治療
本症候群は、色素斑以外には症状がないため放置されていることが多いですが、整容目的でQスイッチレーザー(Nd:YAGやアレキサンドライト)で治療されることがあります。液体窒素療法もある程度の効果が認められています。
執筆:2015.1