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良性対称性脂肪腫症

良性対称性脂肪腫症 (benign symmetric lipomatosis, Madelung disease)

本症は、頸部、体幹、四肢に対称性に皮下脂肪の沈着を認める稀な疾患です。特に、病初期から生じる前頚部~項部~肩甲部にかけての襟巻状の脂肪沈着は特徴的で、buffalo hump、horse-collar deformity、pseudoathletic appearanceなどと表現されます。
過剰な脂肪沈着により体重が増加し、頚の可動性低下や疼痛、気道圧迫や呼吸障害、血管圧迫障害なども生じることがあります。
この他にも、倦怠感、筋肉痛、筋力低下、筋痙攣や、四肢の神経症状(知覚低下、知覚過敏、異常感覚)、自律神経異常(食後の異常発汗や発赤、異常な血圧変動や心拍数)、耐糖能異常、成人喘息、夜間下痢、足異常(足底潰瘍、足根骨、中足骨、趾骨などの自然発生的な骨折)を合併することもあります。
本症の好発年齢は30-60歳で、圧倒的に男性(男女比15~30:1)に多いです。

検査

MRIやCTで皮下の脂肪組織が増生していることが確認できます。

病理所見

皮下組織に被膜や隔壁構造の無い脂肪組織が肥厚・増生しますが、脂肪細胞に異常を認めません。

原因

現在のところ、原因は不明ですが、多くの症例で大量飲酒の既往があることから、アルコール摂取が発症に関与していると推察されています。病変脂肪細胞内での脂肪分解異常、肝チトクロームP450の代謝異常、ミトコンドリア機能異常、高レプチン血症との関連などの説があります。

治療

食事制限やアルコール摂取中止しても症状の改善は基本的に認めません。
広範に病変がある場合、外科的切除は部分的な減量に留まるため、適応は限定されます。脂肪吸引術を繰り返し施行することもありますが、外科的切除や脂肪吸引術をしても再発することが多いのが現状です。
従って、整容的に希望がある場合や脂肪沈着により気道圧迫などの機能障害を合併している場合に、脂肪吸引術や外科的切除を行うことになります。
Phosphatidylcholineの局所注射も試験的に行われることがあります。

執筆:2012.7