ネザートン症候群

ネザートン症候群(Netherton syndrome)


本症は染色体劣性遺伝の先天性疾患で、アトピー素因と魚鱗癬(曲折線状あるいは先天性魚鱗癬様紅皮症)と毛髪異常(重積裂毛:毛が竹節状の結節を作り、折れやすくなっている。捻転毛や断裂毛などを認めることもある)を3主徴とする症候群です。しかし、全ての症状が揃わない症例も報告されています。
本症ではセリンプロテアーゼインヒビターをコードする遺伝子SPINK5の変異があるため、角質剥離酵素のセリンプロテアーゼ活性が異常亢進して角質が過剰に剥離しており、表皮の皮脂膜や角質細胞間脂質や天然保湿因子も少なくなり、表皮バリア機能が著しく損なわれている状態に陥っています。尚、遺伝子異常の部位により臨床症状の差が生じると考えられています。
典型例では新生児期頃から魚鱗癬症状が出現し、特に眼・口・会陰部周囲が著明です。紅皮症は感染後に活発化することが多いです。乳児は生育不良、汎アミノ酸尿、好酸球増多、血清IgE値上昇、再発性の細菌およびカンジダ感染、顕著な高ナトリウム血性脱水を罹患することがあります。
頭髪は生後数ヶ月で一度全脱毛を生じ、その後再生してきた毛髪は粗造で短くて細く、もろいです。眉毛、睫毛、および体毛も異常になります。
本症のほとんどの患者はアトピー性皮膚炎を生じますが、この他にも蕁麻疹、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性腸炎、血管性浮腫などを合併することがあります。一部の患者は精神発達遅延もあります。
尚、本症患者では体温調節が難しいため、高温・高湿度では容易にうつ熱や脱水症状を生じやすく、寒期には低体温を生じやすいです。

治療

本症では表皮バリア機能障害が著明にあるため、経皮水分蒸散の異常亢進やアレルギー性過敏性腸炎、反復する感染症の合併も多いです。このため、新生児期には水分・電解質バランスへの注意が必要です。新生児期以降も、皮膚乾燥を予防するために保湿剤の全身塗布を励行し、皮膚の二次感染に対しては抗菌剤外用も適宜使用します。掻痒が激しい部位にはマイルドクラスのステロイド外用を塗布します。
本症では経皮吸収が異常に亢進しているため、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏0.03%小児用)を外用すると本剤の血中濃度が高くなり,腎障害等の副作用が発現する可能性があるため、その使用は禁止されています。

執筆:2010.10

▲PageTop

ページトップに戻る