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日本紅斑熱

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

日本紅斑熱(Japanese spotted fever)

本症は紅斑熱群リケッチアの一種 Rickettsia japonica を起因病原体とし、媒介するマダニに刺咬されることにより引き起こされる感染症です。

病原体と感染経路

Rickettsia japonica は細胞外では増殖できない偏性細胞内寄生細菌で、マダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなど)を媒介として、動物(齧歯類や野生のシカなど)や人間を吸血した際に感染します。
マダニの生息域は西日本から関東圏に徐々に拡大しており、今後もその生息域が拡大する可能性が高いため、注意が必要です。また、 発生時期も全国的に春~晩秋までの長期間に発生するので、油断できません。

臨床症状

発熱、紅斑、マダニの刺し口を三主徴とし、皮疹は四肢末端部位に比較的強く出現し、刺し口も小さいです。
マダニに刺されて2-8日頃から、頭痛や発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛などが生じます。発熱と同時期前後に紅色斑様丘疹が発生してきます。リンパ節腫脹はあまり見られないことが多いです。

検査所見&確定診断

CRPの上昇、肝酵素(AST、ALT)の上昇、白血球減少および血小板減少などがみられる。
確定診断は主に、間接蛍光抗体法による血清診断で行われます。紅斑熱群リケッチアは種間で血清学的交差反応が強く、R. japonica を抗原として用いれば全ての紅斑熱群リケッチア症の診断が可能であるため、輸入感染症にも対応できます。また、類似疾患の鑑別のため、ツツガムシ病リケッチアの抗原を併用することが望ましい。
また、病原体診断としては、末梢血中からのリケッチアDNA 検出が行われます。EDTA 加全血からbuffy coat 分画を単離し、DNAを抽出、PCR法による検出を行ないます。

治療

ダニ媒介性リケッチア症の一般的な治療および予防法に準じて行います。治療には、本症を早期に疑い適切な抗菌薬を投与することが極めて重要です。第1選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬です。また、ニューキノロン系薬が有効であるとの報告もありますが(ツツガムシ病には無効)、βラタム系の抗菌薬は全く無効です。
また、本症の予防には、ワクチンは利用できず、ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要です。発生時期および発生地を知り、汚染地域に立ち入らないこと、農作業や森林作業でやむを得ず立ち入る際には、(1) 皮膚の露出を少なくしダニの付着を防ぐ、(2) ダニ忌避剤を使用する、(3) 作業後入浴し、注意深く付着ダニの除去を行う。この際、感染を防ぐためダニを指でつぶさず、頭部をピンセットなどで摘んで除去する、(マダニは口器が長く 皮膚に深く刺咬していて、入浴だけでは除去できない可能性あり。)などに注意することが必要です。

※全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。

執筆:2022.9