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メトトレキサート(MTX)関連リンパ増殖性疾患

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

品川シーサイド皮膚・形成外科クリニック > メトトレキサート(MTX)関連リンパ増殖性疾患

関節リウマチ(RA)患者では一般集団よりも2~6倍の頻度で悪性リンパ腫の発生率が高いことが知られている。RA治療のためにMTXを投与されると、更に医原性の免疫不全に関連したリンパ増殖性疾患(lymphoproliferative disorder:LPD)がしばしば発症する。MTX中止により、LPDが消退することが多いので、MTXがその病因に関与していると考えられている。

原因

本症の発症機序は明らかでないが、RAにおける免疫異常、MTXによる免疫抑制、加齢などが関与していると考えられている。
MTX投与により、抑制性T細胞や細胞障害性T細胞の機能低下が生じて、自己抗原刺激により過剰に活性化されたB細胞を抑制できなくなり、B細胞の不死化によるリンパ増殖性疾患が生じるとの説もある。
また、T細胞機能低下により、EBウイルスの再活性化が生じてB細胞活性化を誘発するとの推測もある。

臨床症状

高齢のRA患者に発症することが多く、MTX投与開始からLPD発症までの期間や投与量は症状の発現に一定の傾向は無い。
MTX治療中に、原因不明の発熱、寝汗、体重減少に加えて、リンパ節腫大を認める。
リンパ節外病変として、消化管、皮膚、肝臓、脾臓、肺、腎臓、甲状腺、骨髄、軟部組織にも病変を認めることも多い。

検査所見

白血球分画の異常、貧血、血小板減少、高LDH血症、RAの活動性と相関しないCRP上昇、sIL-2R上昇 EBウイルスは約60%に陽性(EBV陽性例では自然軽快率が高い)

病理組織所見

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が最多、次いで多形型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫が多い。T細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫なども少数ながらみられる。反応性リンパ球増多とされることもある。

治療

MTX中止のみで半数以上の症例で自然軽快する。特にEBV陽性例では有効である。
有効例の多くは中止後1カ月以内には明らかな改善を認めるので、本症を診断した際には即座には化学療法を行わず、まずMTXを中止する。軽快した場合のMTX再投与は避けるべきである。
それでも改善がみられない場合には生検を行って病理組織診断をしてから、化学療法を考慮することが原則である。 尚、その他の免疫抑制剤や生物学的製剤でもLPDの誘発が問題になっているので、十分な注意を払って治療する必要がある。

執筆:2022.11