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海水浴皮膚炎

海水浴皮膚炎 (Seabather's eruption)

本症は、海水浴や海でのレジャーの際、指抜きクラゲ (thimble jellyfish) の幼生、イソギンチャク(Edwardsiella lineate) の幼生、その他の刺胞動物 (larval cnidarians)の幼生と接触して、過敏反応が生じて起こる掻痒性皮膚炎のことです。海外では本症を"sea lice"と表現することもありますが、"sea lice"は本来、海に生息する魚の体表面の寄生虫を意味します。
本症は、熱帯地域に生じることが多く、フロリダ、バハマ、バーミューダ、フィリピン、タイ、ブラジルなどから報告されています。旅行中にこれら地域で海水浴などのレジャーをしたときには注意が必要です。

症状

強い掻痒を伴う紅色小丘疹(1-15mm程度)が、水を通す水着の着衣部位や髪の毛が多い部位に生じます。症状は数日から2週間程度続きます。
その機序は、大量の上記幼生が水着と皮膚の隙間や髪の毛に入り込んだまま、海から陸に上がると、幼生は皮膚に突き刺さったまま死んでしまい、擦ったり、乾燥したり真水に曝されると刺胞を排出して症状が出現します。即ち、症状は海から上がってすぐに出現するのではなく、そのまま体を日干ししたり、真水のシャワーを浴びたりした後に出現します。

対処法&治療

本症の流行地域では海水浴を控えることが最善ですが、海水浴をしてしまった場合は、海から上がったら迅速に水着を脱ぎ、幼生のいない温かい海水のシャワーを全身に十分浴びることが肝要です。幼生に汚染されていない海水を確保できない場合は、次善の策として髪の毛と水着部位を中心に、熱い真水と洗剤で洗い流すことです。
患部を擦るとさらに悪化するので、注意が必要です。
症状がひどければ、患部にジフェンヒドラミンやステロイド外用します。

日本での海水浴皮膚炎

日本は熱帯域には属さないため、上記のような幼生から生じるのではなく、海中に浮遊するプランクトンのなかで、カニやエビなどの甲殻類の幼生であるゾエアによる接触で生じるものが多いとされます。甲殻類のゾエアは、鋭い棘を持ち、皮膚に刺さると機械的刺激で皮膚炎を生じます。
カニやエビなどの産卵期は春から夏になるため、海水浴時期にこのゾエアが多くなり、本症を生じます。

症状

「チクチク」とした疼痛と掻痒を伴う紅色小丘疹が、水着で被覆されている部位や間擦部に多数出現します。時には全く初期症状が無く、少し時間が経過してから明らかな症状が出てくることもあります。

対処法&治療

海水浴中に「チクチク」とした違和感を感じたら、露出部位だけでなく水着の中も早目に流水で洗い流します。患部はなるべく掻かないようにして、冷却すると症状は和らぐことが多いです。 症状が強い場合にはりステロイド外用などで対処します。

執筆:2011.12