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菌状息肉腫

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

悪性リンパ腫(malignant lymphoma)はリンパ球系細胞の悪性腫瘍です。皮膚リンパ腫(皮膚原発悪性リンパ腫)は非Hodgkin リンパ腫の一つで、消化管や鼻咽喉で原発する悪性リンパ腫の次に頻度の高い節外性リンパ腫です。皮膚リンパ腫は,皮膚原発で診断時から6 か月間に皮膚以外の臓器で腫瘍細胞を認めないものと定義されています。
皮膚リンパ腫は、T-、NK-、およびB-細胞腫瘍の異なる成分から構成されています。そのうち、皮膚T-細胞リンパ腫 (Cutaneous T-cell Lymphoma; CTCL) は皮膚原発リンパ腫の約2/3と考えられています。
CTCLは緩徐に進行する(indolent)タイプと急激な経過をとる(aggressive)タイプがありますが、前者の代表的疾患が菌状息肉腫(Mycosis Fungoides; MF)であり、後者がセザリー症候群 (Sezary syndrome; SS) にはいります。SSはMFの白血化した亜系と考えられています。
MFは皮膚に存在するmemory T-helper cell (CD4+ cells) が悪性化したもので、皮膚のTリンパ球が外的抗原により刺激され続けると、さまざまな悪性形質変換の可能性があり、職業上の化学・放射線・薬剤などの被曝、感染などが挙げられるが、確実な原因は不明です。

疫学

いずれの年齢でも発症しますが、主に成人~高齢者に多く発症します。男女比は2:1で、統計上は男性に多く発症しています。WHO の報告では、10万人あたり0.29人と稀な疾患です(2001年)。

症状

病初期には、主に非露光部位に軽度の掻痒を伴う淡紅色や褐色調の紅斑が出現し、この時期を「紅斑期(Patch stages)」と呼びます。この時期で症状が進行しない状態のまま天寿を全うできることも多く、時には治療せずに病変が消退することもあり、この時期は通常数年~十数年におよびますが、悪性度が低いと考えられています。
しかし、その中には徐々に症状が進行して、淡紅色や褐色の紅斑が癒合したり、軽度盛り上がった局面となり、時に環状病変になることもあります。また、色素沈着・脱失が目立ち、紅皮症、魚鱗癬様、表皮壊死、糜爛、多形皮膚委縮を呈することもあります。この時期を、「扁平浸潤期」あるいは「局面期(Plaque Stages)」と呼びます。この状態からでも特に治療しなくても、症状が軽快して紅斑期に戻ることもあります。この時期は通常数年~10年前後におよびます。
さらに進行すると、紅斑局面部位から結節や腫瘤が形成されて、糜爛や潰瘍を伴うこともあります。また、紅斑ではなかった部位にも新たに同様の病変が出現します。この時期を「腫瘍期(Tumor Stages)」と呼びます。こうなると、悪性度が加速してきた段階を示しています。この時期は通常数ヶ月~数年です。
最終的には肺などの内臓へ病変が拡大(内臓浸潤期)して予後は極めて不良となり、通常数ヶ月で死の転帰をとります。

※通常とは異なる特殊な臨床像を持つ菌状息肉症(全体の約5%)もあります。毛包に癌細胞の浸潤する「毛包好性菌状息肉症」、組織学的に肉芽腫の見られる「肉芽腫性菌状息肉症」、脱色素斑が主体である「脱色素斑型菌状息肉症」、「多形皮膚萎縮性菌状息肉症」、「色素性紫斑様菌状息肉症」、「孤在性菌状息肉症」、「手掌足底菌状息肉症」、「魚鱗癬型菌状息肉症」等です。

診断

診断を確定する方法は皮膚生検です。即ち、発疹のある皮膚の一部を切除し、それを顕微鏡で調べる病理組織検査を行います。これによって、診断を明らかにするだけでなく、病気の進行程度も判断されます。病理所見では、浸潤リンパ球の中には、核の形状が深くくびれた大型の異型細胞 (cerebriform nuclei) が存在して、息肉症細胞(mycosis cell)と呼ばれます。表皮向性も顕著になり、ポートリエ微小膿瘍 (Pautrier's microabscess) と呼ばれる、多数の巣状の表皮内リンパ球浸潤が認められるようになります。

鑑別疾患

湿疹・皮膚炎群、乾癬、類乾癬、成人T 細胞白血病、その他の悪性リンパ腫などです。

治療

治療にあたり、まず病期を確定後、予後を予測しつつ、身体的要因、社会的要因などを加味して、どの治療方法が一番有用であるかを検討します。
扁平浸潤期までの病変にはPUVA やnarrow band UVB などの光線療法で、ある程度の進行を抑制します。また、光感受性物質のδ -アミノレブリン酸(ALA)の外用後エキシマダイレーザー(630 nm)を照射する光線力学的療法(photodynamic therapy;PTD)も試みられています。その他にはステロイド局所外用やインターフェロンαやγの全身あるいは局所投与が行われます。腫瘍期などの進行例に対しては全身電子線照射や多剤併用化学療法(CHOP 療法などの非Hodgkin リンパ腫に準じますが、標準レジメはありません)を行います。最近、末梢血幹細胞移植も試用されています。

執筆:2011.5