結合織母斑

結合織母斑 (connective tissue nevus)

本症は皮膚に膠原線維、弾性線維またはムコ多糖類が増加して、限局性に正常皮膚色から淡褐色調の軽度隆起した局面や結節が出現する、原因不明の良性疾患です。幼少時期から、楕円形丘疹の集合として生じることが多く、主に腹部、背部、臀部、上腕または大腿に局在し、通常は単発性に生じますが、種々の基礎疾患を背景に生じることがあります。

I)膠原線維(collagen)由来

Familial cutaneous collagenoma(FCC):遺伝性に思春期以降から、複数の丘疹様結節が上背部に限局して生じます。妊娠中に病変の数が増加する場合や、心疾患を併発することもあります。
Eruptive collagenoma: 後天性に生じる変異型と考えられ、FCCと類似の多発性の丘疹様結節が四肢、躯幹、耳介などに生じます。
Isolated collagenoma: 非家族性に生じる過誤腫と考えられ、FCCと同様の皮疹ですが、時に帯状疱疹様の形状を呈することもあります。
Plantar cerebriform collagenoma:孤発性に大脳様局面が足底に生じることが多いが、Proteus syndromeに合併して生じることがあります。

*Collagenomaを合併することがある基礎疾患

1)多発性内分泌腺腫症(MEN 1型 ):MEN1遺伝子あるいはCDKN1Bなどの遺伝子生殖細胞系列変異により発症すると考えられる遺伝性疾患です。20種以上の内分泌腫瘍および非内分泌腫瘍がさまざまな組み合わせで生じます。内分泌腫瘍としては、①副甲状腺過形成あるいは腫瘍(約95%) ②膵腸管神経内分泌腫瘍(約60%)③下垂体腫瘍(約40%)④副腎皮質腫瘍(約10%)⑤カルチノイド(約5%)があります。非内分泌腫瘍として、本症、顔面血管線維腫、脂肪腫、髄膜腫、上衣腫、平滑筋肉腫などが生じます。
2)結節性硬化症:TSC1、TSC2遺伝子異常により、全身に過誤腫や白斑が生じ、精神発達遅滞や行動異常などの症状を呈する疾患です。この疾患に併発するシャーグレンパッチは本症の変異型と考えられており、腰仙骨部に限局性に単発あるいは複数個認められることが多いです。
3)ダウン症候群:21番染色体のトリソミーから発症する先天性症候群で、身体的発達の遅延、特徴的な顔貌、軽度の知的障害を生じます。皮膚に本症が生じることもあります。
4)カウデン病:常染色体優性遺伝疾患(PTEN, SDHB, SDHD, KLLNなど)で消化管に過誤腫性ポリポーシスを生じます。皮膚に本症が生じることもあります。
5)プロテウス症候群:AKT1の体細胞変異モザイクから生じる、全胚葉組織の進行性、体節性または斑状の過成長を特徴とし、主に骨や皮膚および脂肪ならびに中枢神経系に異常を呈します。特に本症は大脳様の特異な病型をとり、手足、腋窩、耳介などに発症します。
6)その他:脳頭蓋皮膚脂肪腫症、慢性骨髄性白血病、梅毒に本症が併発することがあります。

II)弾性線維(elastin)由来

Nevus elasticus: 非遺伝性の後天性に生じる弾性線維腫で、後天性に小児期や思春期早期に生じます。
*Elastomaを合併することがある基礎疾患
Buschke-Ollendorf 症候群:皮膚と骨に異常を生じる常染色優性遺伝性疾患(LEMD3の変異)で播種性皮膚線維腫症(エラスチンが過剰蓄積)と骨斑紋症が生後から思春期全までに生じます。皮膚病変はわずかに隆起した硬い大小の結節が集簇して数か所の局面を形成し、広範に播種状に散在していることもあります。躯幹・四肢に生じることが多いです。

III)ムコ多糖類由来

ハンター症候群:X染色体(Xq28)劣性遺伝性のムコ多糖症Ⅱ型であり、ムコ多糖分解酵素活性(iduronate-2-sulfatase)の欠損または低下によって、結合織を中心とした全身の諸臓器に不完全に分解されたムコ多糖が蓄積して、様々な症状を呈する遺伝性代謝異常症です。胸、肩甲部、上腕などの皮膚には、対称性の硬い小丘疹病変が集簇して敷石状の外観を呈します。

病理所見

Collagenomaでは、高密度で粗造な膠原線維が増加して真皮層が肥厚しています。
花筵状の膠原線維が増殖している場合はCowden diseaseの可能性があります。走査電顕や透過電顕では、コラーゲン線維が不均一で粗造な膠原線維が目立ちます。
Elastomaでは、真皮内に切れ目のない混交した弾力線維の数が増加しています。
また、ムコ多糖類の増加するHunter syndromeでは、細胞外基質にムチンが著増して、電顕で繊維芽細胞に特徴的な液胞を認めます。

治療

まず、本症を合併する基礎疾患の有無を精査して確認します。基礎疾患を認めず、孤発性で小病変であれば外科的切除できますが、病変が多数散在する場合や病変が広範囲の場合は、切除できません。ステロイド局注やコラーゲン分解酵素局注なども考えられますが、その効果は限定的です。

執筆:2017.9

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