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肥厚性皮膚骨膜症

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

肥厚性皮膚骨膜症 (pachydermoperiostosis)

本症は脳回転状皮膚肥厚、撥指、骨膜性骨肥厚を3主徴とする比較的稀な疾患です。
多くは思春期前後に発症し、症状が徐々に進行して5-20年の経過で症状が固定します。
男女比は5-9:1で男性に多く、約30%に家族内発症があり、主に常染色体優性遺伝とされるが、常染色体劣性あるいは伴性遺伝との報告もあります。

原因遺伝子

染色体4q33-q34に位置するNAD-dependent 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase (HPGD)の遺伝子はprostaglandin E2 (PGE2) の分解酵素をコードしており、本症ではその変異によりPGE2を分解できずに、慢性的に血漿や尿中のPGE2が高値になると考えられています。
PGE2は血管透過性を亢進させて組織での炎症や疼痛を引き起こす作用や、破骨細胞での骨吸収を刺激して骨吸収を促進させる作用があるため、本症における皮膚症状、骨痛、関節痛などはPGE2高値による可能性が高いと考えられています。
この他にも、solute carrier organic anion transporter family member 2A1 (SLCO2A1)の遺伝子変異により、prostaglandin transporter(PGT)の機能障害が生じてprostaglandinの細胞質への取り込みの調整ができなくなり、血漿中のPGE2 が高値になるとの報告や、本症の完全型ではWnt signaling経路(遺伝子発現や細胞増殖などを調整するシグナル伝達系)が亢進し、逆にWnt拮抗作用を持つDickkopf (DKK1)の発現が低下しているために、皮膚の線維芽細胞でのβ-cateninの発現が増加して、皮膚の線維芽細胞の機能亢進と皮膚肥厚を促進しているとの報告もあります。

臨床症状

思春期頃から、顔面や頭皮に脳回転状皮膚肥厚を呈し、進行すると獅子様顔貌に至ることもあります。また、同部位に脂漏性皮膚炎症状を併発することもあります。
両手足の撥指や骨膜性骨肥厚は重要な症状であり、その程度によってTouraineによる分類があります。
1)完全型:脳回転状皮膚肥厚、撥指、骨膜性骨肥厚の全てを認める
2)不完全型:撥指、骨膜性骨肥厚を認めるが、脳回転状皮膚肥厚を認めない
3)初期型:骨変化が欠如あるいは軽度で、脳回転状皮膚肥厚を認める
尚、多発関節痛と腫脹、多汗症(両手足あるいは全身)、手足に灼熱感などの違和感や眼瞼下垂を伴うこともあります。

鑑別疾患:

1)Rosenfeld-Kloepfer syndrome:本症の亜型と考えられ、下顎あるいは上顎肥大、大きな手足&外鼻&口唇&舌、前頭骨の突出、脳回転状皮膚肥厚、角膜白斑を呈します。
2)Currarino idiopathic osteoarthropathy:本症の不全型で児童に多く発症し、湿疹と頭蓋縫合(特に泉門)閉鎖遅延が特徴です。
3)心肺系疾患に関連した二次性肥厚性肺性骨関節症:本症との鑑別は重要であり、二次性肥厚性肺性骨関節症では時に肺癌を併発することがあるので、注意が必要です。
4)末端肥大症
5)梅毒性骨膜肥厚症
6)甲状腺性肢端肥大症

治療

骨膜性骨肥厚による疼痛や関節痛に対して、非ステロイド性抗炎症薬などの対症療法が行われます。また、症状によってはコルヒチン、ビスホスホネイト系骨吸収阻害剤やタモキシフェンなどが使用されることもあります。時には、外科的に迷走神経切離術も考慮されることがあります。
脳回転状皮膚肥厚に対しては、余剰皮膚切除あるいは骨膜合併切除などの整容的形成術が行われます。
膝関節痛が内服薬で軽快しない場合は、関節鏡下滑膜切除なども行われることがあります。
撥指に対しては、ほとんどが治療せず経過観察することが多いです。

執筆:2015.6