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平滑筋肉腫

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

平滑筋肉腫 (leiomyosarcoma)

本症は平滑筋由来の悪性腫瘍で、全軟部肉腫の5-16%を占めます。発生部位は後腹膜(骨盤)が40-45%と最も多く、四肢の深部軟部組織に生じるものが30-35%、体表に生じるものが15-20%、次いで下大静脈、下肢深部静脈から生じるものが5%程度です。後腹膜や下大静脈に生じるものは女性に多いですが、その他の部位では性差を認めません。好発年齢は40歳以上で、小児では稀です。
特に、体表に生じる平滑筋肉腫を表在型平滑筋肉腫 (superficial leiomyosarcoma) と呼び、さらに皮膚型 (cutaneous leiomyosarcoma) と皮下型 (subcutaneous leiomyosarcoma) に細分類されています。前者は毛包の立毛筋由来であり、後者は表在血管の平滑筋由来と推察されていますが証明されていません。
表在型平滑筋肉腫は男性に多く(男女比:2-3:1)、大腿が好発部位ですが、全表在性軟部肉腫の2-3%を占めるに過ぎません。
また、皮膚型平滑筋肉腫は頭頚部に48%と多く、次いで四肢に31%という報告もあります。

臨床症状

腫瘍の大きさや部位により、症状が異なります。後腹膜発生例では、増大するまで無症状のことが多く、時に疼痛を伴います。下大静脈発生例では、部位により静脈を圧排することで、Budd-Chiari症候群、腎不全、下肢の浮腫などが生じます。四肢の筋肉での発生例では、疼痛や循環障害を生じることは少なく、無症状の腫瘤を呈することが多いです。
表在型平滑筋肉腫では、有痛性の結節であるとされ、皮膚平滑筋肉腫は、有茎性、分葉状の境界明瞭な硬結性病変を形成します。皮下平滑筋肉腫では、視診上、特徴的な所見はありません。

病理所見

錯綜し交錯する束状配列がみられ、時に核は棚状配列や、花むしろ状構造をとることもあります。一般には細胞密度が高い領域で占められるが、線維性または粘液腫状になることもあります。個々の腫瘍細胞の核は両端が鈍で長く、両切り煙草様 (cigar-shaped nuclei with blunt end) と呼ばれています。
平滑筋細胞への分化を証明するために免疫染色 [Desmin, α smooth muscle actin (αSMA), muscle actin, heavy-caldesmon, calponin, smooth muscle myosin] が不可欠になります。

治療

本症の治療の原則は広範な外科的切除です。切除不能例や再発例では、放射線照射や化学療法(CYVADIC,AI療法など)が行われますが、効果は不定です。

予後

後腹膜や下大静脈といった大血管での発生、腫瘍の大きさ、細胞分裂能が予後不良因子とされます。また、深在型は浅在型よりも予後不良とされます。
四肢の平滑筋肉腫では、局所再発率は10-25%に、転移が45%にみられ、5年生存率は64%と報告されています。
皮膚平滑筋肉腫は比較的予後がよいとされますが、皮下平滑筋肉腫は50-70%で再発、約30%で転移を起こすとされます。
尚、転移はリンパ行性ではなく血行性であり、肺や肝臓に転移することが多いです。

執筆:2012.3