フィラリア症

フィラリア症 lymphatic filariasis


バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)とマレー糸状虫(Brugia malayi)を蚊が媒介してヒトに寄生して発症します。
バンクロフト糸状虫(雌は体長65?100mm、体幅0.3mm。雄は体長40mm前後、体幅0.1mm)では、雌の子宮内の卵から、鞘をかぶったミクロフィラリア(体長244?296μm、体幅8-10μm)が孵化します。ミクロフィラリアは最初リンパ管に現れ、リンパ液の流れに乗って血管に移動します。かつて日本にも見られた東アジアの個体群のミクロフィラリアは昼間は肺の毛細血管に潜んでいますが、夜10時頃になると末梢血管に現れはじめ、末梢血中で最も多くなるのは午前0-4時の間で、夜が明けると肺に戻ることを繰り返します。但し、南太平洋諸島からは昼間に末梢血中に出現する個体群や、個体群によってはこうした周期性を示さないものあります。
末梢血中に出現したミクロフィラリアが中間宿主であるイエカ属やハマダラカ属などの蚊の吸血により摂取されると、蚊の中腸内で鞘を脱ぎ、第1期幼虫となって胸筋に移行します。第1期幼虫はここで2回脱皮して感染幼虫である第3期幼虫にまで発育し、感染幼虫は胸筋から血体腔を経て口吻の根元に集まり、蚊の吸血時に口吻から脱出して蚊の刺し口から人体に侵入します。感染幼虫がヒトに感染すると3ヶ月から1年後に成熟し、ミクロフィラリアを産出するようになり、成虫は4?5年間生存すると推測されています。
感染者はしばらく無症状ですが、感染後平均約9ヶ月でリンパ管炎、リンパ節炎が引き起こされ、数週、数ヶ月毎に熱発作が繰り返されるようになります。この発作は成虫やミクロフィラリアの代謝産物や、蚊に移行することができずに死滅したミクロフィラリアの死体が免疫応答を引き起こすためと推定されています。成虫が寄生する箇所がリンパ管のため、宿主のリンパ管は次第に閉塞して最終的にリンパ管の破壊に至り、体内のフィラリアが死滅した後でも後遺症として残ります。リンパ管が破壊されると末梢組織の組織液がリンパ管を経て血管系に回収される循環が阻害されるようになって、陰嚢水腫やむくみを来たし、この慢性刺激で象皮症を引き起こします。
アフリカ大陸、アラビア半島南部、インド亜大陸、東南アジアや東アジアの沿岸域、オセアニア、中南米と世界の熱帯、亜熱帯を中心に広く分布し、日本でもかつては九州全域や南西諸島を中心に患者が見られた。
マレー糸状虫も、同様に感染後遺症としての象皮症の原因となりますが、バンクロフト糸条虫の場合と異なり膝から下腿、肘から前腕部位に限局します。中間宿主はヌマカ属の蚊です。熱帯アジアの東南アジア、インド、バングラデシュ、スリランカに分布し、日本でも、かつては伊豆諸島の八丈小島に特異的に存在していることが知られていましたが、現在では存在しないと考えられています。
治療にはジエチルカルバマジンやイベルメクチンの投与を行います。

執筆:2010.11

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