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Bueger病

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

Bueger病(バージャー病;閉塞性血栓性血管炎Thromboangiitis Obliterans: TAO)


本症は閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、四肢の主幹動脈に閉塞性の血管全層炎をきたす疾患です。特に下肢動脈の末梢動脈に血栓が生じて動脈が閉塞し、虚血症状として間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特発性脱疽とも呼ばれる)を生じます。また、しばしば表在静脈にも炎症をきたし(遊走性静脈炎)、稀に大動脈や内臓動静脈にも病変を生じます。

疫学

年間の全国推計患者数は約8,000人(95%信頼区間8,400~12,000人)で、男女比は9.7対1と圧倒的に男性が多いです。推定発症年齢は男女とも30代から40代が最も多いが、現在の患者の中心は45~55歳であり、患者の高齢化が示唆されています。

病因

特定のHLA(human leukocyte antigen)と本症発症の関連性が強く疑われており、ある遺伝性素因に何らかの刺激が加わると発症するとの説が有力ですが、原因は未だ不明です。発症には喫煙が強く関与しており、喫煙による血管攣縮が誘因になると考えられています。最近の疫学調査では患者の93%に明らかな喫煙歴を認め、受動喫煙を含めるとほぼ全例が喫煙に関与していると考えられています。また、病変部位から高率に歯周病菌スピロヘータ属 Treponema denticola が発見されていることから、歯周病との因果関係が疑われ検討が行われています。

症状

四肢主幹動脈に多発性の分節的閉塞をきたすため、動脈閉塞によって末梢の虚血の程度に応じた症状を認めます。
虚血が軽度の時は冷感・シビレ感や蒼白化、寒冷暴露時にはレイノー現象を認め、虚血がさらに進行すると間欠性跛行や安静時疼痛が出現し、血行が途絶すると四肢に潰瘍・壊死を形成して特発性脱疽と呼ばれる状態になります。また、爪発育不全、皮膚硬化や胼胝を伴い、わずかな刺激でも難治性の潰瘍を形成します。一方、しばしば表在静脈炎を生じ、症状の部位が移動する(遊走性静脈炎)ことがあります。
最近増加している閉塞性動脈硬化症と同様な症状であるため、血管造影を行なって鑑別します。

治療

血管の収縮を招くストレスに暴露しないように寒気を避け、温浴、マッサージ、歩行訓練や運動療法等で血流を良くすることが基本的な治療です。また、患部を清潔に保ち、靴づれなどの外傷を避ける事も重要です。
喫煙は血管攣縮を招く事から、間接喫煙を含めて禁煙を厳守させることが最も大切であり、適切な禁煙指導を行う必要です。さらに、歯周病治療および口腔内ケアの徹底も望まれます。
薬物療法としては経口抗血小板製剤や抗凝固薬、プロスタグランジンE1製剤などの血管拡張剤などが行われます。重症例に対しては末梢血管床が良好であれば、バイパス術などの血行再建術も行なわれます。血行再建が適応外の症例では、交感神経節切除術やブロックが行われます。最近では、肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療や自己造血幹細胞を用いた再生医療が試みられています。

予後

生命予後に関しては閉塞性動脈硬化症と異なり、心、脳、大血管病変を合併することはないため良好ですが、四肢の切断を必要とすることもあり、就労年代の成年男性のQOL(quality of life)を著しく低下することも多いです。


*本症は特定疾患治療研究対象疾患に該当するため、医療費助成の制度があり、「特定疾患医療受給者証」の交付を受けると治療にかかった費用の一部が助成されます。

執筆:2011.2