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悪性線維性組織球腫

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma;MFH、あるいはPleomorphic undifferentiated sarcoma;PUS)

本症は最も頻度の高い軟部組織肉腫(軟部組織腫瘍の約20-24%を占める)ですが、発生起源細胞は現在不明ですが、腱や靱帯由来ではないかと推定する研究者もいます。悪性度は高く、予後不良となりやすいです。

疫学

50歳から60歳に最も多いが10歳から90歳まで幅広い年代で発症の報告がある。小児では稀ですが、angiomatoid 型は20代以下に比較的多くみられます。 男女比はおよそ2:1で、黒人や黄色人種に比較して白人に多いとされています。

症状

成人の四肢および後腹膜に好発しますが、その他の部位にも生じます。皮膚に原発することは稀で、通常は皮下に無痛性で分葉状あるいは多結節性の腫瘤が生じます。遠隔転移の頻度は後述する組織型によっても異なりますが、一般的には肺(90%)、骨(8%)、肝(1%)で多くみられます。

診断

軟部組織腫瘍にはMRIで腫瘍の性状(大きさ、位置、腫瘍内部の構成など)をおよそ把握できます。MRIが使用できないような場合(生体内に金属が埋入されている)は、CTで代替することもあります。転移の有無を確認するために、CTやMRIに加えて、骨シンチやPETスキャンで精査することもあります。
しかし、何より正確な診断を行うためには生検が必要です。これにより、組織診断による類型が決定されます。

病理所見

病理組織学的には、異型性の強い線維芽細胞様細胞と組織球様細胞から成り、奇異な形の巨細胞や炎症性細胞浸潤を交えて極めて多彩な像を呈し、花むしろ状多形型(Storiform-pleomorphic)、粘液型(Myxoid)、巨細胞型(Giant cell)、炎症型(Inflammatory)、類血管腫型(angiomatoid)の5 型に分類されます。このうち、花むしろ状多形型が70%を占め、巨細胞型、炎症型、類血管腫型は稀です。また、炎症型は後腹膜に生じることが多く、粘液型は進行が遅く比較的予後は良好です。

遺伝子異常

尚、本症の8割程度に遺伝子変異(1q31, 9q31,5p14, 7q32, 3p12, 11p11, and 19p13)が報告されています。

予後を決定する因子

腫瘍の組織学的悪性度、大きさ(5cm以下)、遠隔転移の有無、腫瘍の外科的完全切除の可否が、最も重要な予後因子となります。また、年齢や原発巣の位置や深達度も予後にかかわる重要な因子と考えられています。従って、腫瘍が低悪性度組織型、大きさが小さく、遠隔転移が無く、浸潤度も浅く、完全切除が可能な部位に限局している場合は予後がよいと考えられます。

治療

外科的完全切除が優先されます。四肢に腫瘍があっても、上述の予後因子を考慮して完全切除が可能であれば、極力四肢を温存する手術を行います。しかし、それが敵わない場合は四肢切断術も考慮せざるをえません。 放射線治療は腫瘍の性状に応じて、局所再発抑制のために、術後照射(45-65Gy)を行うことも多いです。時に症例(後腹膜に生じた場合など)に応じて、術前あるいは術中にも照射することがあります。 化学療法による本症への治療で画期的に有効な薬剤はまだ見当らないが、現在のところdoxorubicinやifosfamideが使用されることが多いです。再発が予想される高悪性度組織型の症例や既に再発した症例に使用されます。

予後

海外の多施設の報告では、本症の全局所再発率は、20-30%前後、転移は35%前後、全5年生存率は65-70%です。

執筆:2012.5