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アレルギー性肉芽腫性血管炎

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

品川シーサイド皮膚・形成外科クリニック > アレルギー性肉芽腫性血管炎

アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis : AGA ;Churg-Strauss症候群)


本症は別名をChurg-Strauss症候群と称し、先行症状として気管支炎喘息やアレルギー性鼻炎がみられ、末梢血好酸球増多を伴って血管炎を生じ、末梢神経炎、紫斑、消化管潰瘍、脳梗塞・脳出血・心筋梗塞・心外膜炎などの臨床症状を呈する疾患です。

疫学

好発年齢は30~ 60歳で、男:女 = 4:6でやや女性に多い。我国における年間新規患者数は約100例と推定され、年間の医療施設受診者は、約1800例と推定されています。

病因

気管支喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球増多症を有する症例に発症すること、及び抗好中球細胞質抗体であるMPO-ANCA(抗ミエロぺルオキシダーゼ抗体)が約50%の症例で検出されることから、何らかのアレルギー性機序により発症すると考えられますが、未だ病因は不明です。尚、ロイコトリエン受容体拮抗薬使用後に本症が発症することがありますが、明らかな因果関係は証明されていません。

病態

血中の好酸球増加、好酸球性組織障害因子(ECPなど)の上昇、IgE高値があります。血管炎の組織では、好酸球の著明な増加を伴った壊死性血管炎や白血球破壊性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)が認められ、時に、血管外に肉芽腫形成が観察されます。血管炎の病理所見は、真皮小血管を中心に核塵を伴い、血管周囲の好中球と著明な好酸球浸潤を認める細小血管の肉芽腫性あるいはフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎がみられます。稀に小動脈の壊死性血管炎がみられます。

症状

主要臨床症状は、先行する気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎と、種々の血管炎症状(発熱、体重減少、多発性単神経炎、筋痛・関節痛、紫斑、胃・腸の消化管出血、肺の網状陰影や小結節状陰影、心筋梗塞や心外膜炎、脳梗塞・脳出血など)によるものです。特に、多発性単神経炎(末梢神経炎)は高率に合併して、急性症状が改善してからも遷延したり、重篤な後遺障害を認めることがあります。

診断

3大主要徴候を認めることによる。即ち、・先行する気管支喘息、・血中の好酸球の増加(800/μL以上)、・血管炎症状を認めることによる。さらに病理組織所見が存在すると確実になる。参考所見として、血沈亢進、血小板増加、IgE高値、抗MPO抗体、ECPの上昇などが重要である。(下記の診断基準参照)

治療

軽・中等度症例は、プレドニゾロン(PSL)30~40mg/日で治療します。重症例では、PSL60mg/日かパルス療法に加えて、免疫抑制療法(例:シクロホスファミド1mg/kg/日)で治療します。治療抵抗性の神経障害に対しては、高用量ガンマグロブリン静注療法が保険適用されています。

予後

上記の治療により、約80%の症例は6ヵ月以内に寛解に至りますが、残りの20%は治療抵抗性であり、ステロイド単独による完全寛解は難しく、寛解・増悪を繰り返します。この内の10%は重篤症例で、重症後遺症を残すか死に至ります。寛解例でも、単神経炎による末梢神経症状が遷延する場合や、時に血管炎が再発を来す症例があるので、注意が必要です。

診断基準項目

a)主要臨床所見
(1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
(2)好酸球増加
(3)血管炎による症状[発熱〈38℃以上、2 週間以上〉、体重減少〈6 ヶ月以内に6 ㎏以上〉、多発性単神経炎、消化器出血、紫斑、多関節痛〈炎〉、筋肉痛、筋力低下]
b)臨床経過の特徴
主要臨床所見(1)・(2)が先行し、(3)が発症する
c)主要組織所見
(1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性、またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在
(2)血管外肉芽腫の存在

判定基準

a)確実(definite)
(1)主要臨床所見のうち気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ1つ以上を示し、同時に主要組織所見の1項目以上を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
(2)主要臨床項目3項目を満たし、臨床経過の特徴を示した場合(Churg-Strauss症候群)
b)疑い(probable)
(1)主要臨床所見1項目および主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
(2)主要臨床所見3項目を満たすが、臨床経過の特徴を示さない場合(Churg-Strauss症候群)

参考となる検査所見

  1. 白血球増加(1 万/μ?以上)
  2. 血小板増加(40 万/μ?以上)
  3. 血清IgE 増加(600U/m?以上)
  4. MPO-ANCA陽性
  5. リウマトイド因子陽性
  6. 肺浸潤陰影(これらの検査所見はすべての例に認められるとは限らない)

鑑別診断

肺好酸球増加症候群、他の血管炎症候群(ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎)との鑑別を要する

参考事項

  1. ステロイド未治療例では末梢血好酸球数は2000μg/m?以上の高値を示すが、ステロイド投与後は速やかに正常化する
  2. 気管支喘息はアトピー型とは限らず、重症例が多い。気管支喘息の発症から血管炎の発症までの期間は3年以内が多い
  3. 胸部X 線所見は結節性陰影、びまん性粒状陰影など、多様である
  4. 肺出血、間質性肺炎を示す例もみられる
  5. 血尿、蛋白尿、急速進行性腎炎を示す例もみられる
  6. 血管炎症候寛解後にも、気管支喘息は持続する例がかなりある
  7. 多発性単神経炎は後遺症が持続する例が多い

執筆:2011.2