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死細胞の行く末

アポトーシスなどで死を誘導された細胞は、周囲のマクロファージや樹状細胞などの食細胞によって、速やかに貪食されて排除される。放置された死細胞からは有害な炎症誘発物質が放出されて炎症反応を誘起させるため、死細胞を適切に処理することが重要になる。
死細胞表面には生細胞にはない特異的分子(eat me signal)と呼ばれる細胞膜の構成成分であるphosphatydil serine(PS)が出現して、これを食細胞が認識して、死細胞のみを選択的に貪食する。食細胞が死細胞の特異的分子(eat me signal)を認識する分子には、スカベンジャー受容体、MER、Tim-4、MFG-E8などが報告されている。このPS認識による死細胞貪食システム以外にも複数の他のシステムによるものが関与していると考えられている。
また、組織の再生や恒常性維持を行っている限り、常に死細胞が生じることになるが、樹状細胞などの食細胞がこの死細胞を絶えず取り込むことで、死細胞に付随する自己抗原に対し免疫寛容を維持していると、最近では考えられるようになってきた。
この考え方によると、生体内で死細胞の処理が遅延したり異常が生じると免疫寛容が維持できなくなり、自己免疫疾患の原因にもなりうることが近年報告されている。
個人的には、アポトーシスが抑制されて死細胞が少なくなるような環境になると、樹状細胞などの食細胞は死細胞が減少することにより、これら死細胞に対する認識や学習・記憶能力が徐々に低下して、機能不全に陥った死すべき細胞の円滑な処理ができなくなり、間接的に老化・発癌などを促進する可能性もありえるのではないかと思っている。