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肢端紅痛症

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

肢端紅痛症 erythermalgia (同義語:皮膚紅痛症、先端紅痛症)

本症は、皮膚の細動脈が周期的に拡張し、四肢末梢の紅潮、皮膚温の上昇、灼熱痛を三徴とする、極めて稀な症候群です。

症状


主に足や手などの末梢に灼熱痛・熱感・発赤が数分から数時間持続します。時に、顔面・耳介・膝などにも症状が出現することもあります。

ほとんどの患者では、症状は温熱(29~32℃)により誘発され、典型的には冷水に浸すことで軽減します。栄養障害性の変化は起こりません。症状は軽度のまま何年も続く場合もあれば、完全に機能不全になるほど重症になる場合もあります。全身性の血管運動機能不全はよくみられ、レイノー現象が起こることもあります。

本症の多くは原因不明で20歳を過ぎると発症する傾向があります。しかし、生下時から小児期に発症する常染色体優性遺伝形式の家族性肢端紅痛症もあります。この場合は、ナトリウムチャネルの閾値を低下させるNa(v)1.7をコードする遺伝子SCN9A(sodium channel, voltage-gated, type IX, alpha subunit)の変異が第2染色体(2q24)にあり、直腸・眼球・顎下腺に突発的な痛みが生じる発作性激痛症(Paroxysmal extreme pain disorder: PEPD)を伴います。乳幼時期から小児期にかけて非癲癇性の痙攣を生じることが多いですが、年齢と共に頻度は少なくなります。この疾患に対する治療はカルバマゼピンが有効ですが、しばしばその効果が不十分なこともあります。

また、本症が二次性に生じる場合もあり、原疾患が発症する2-3年前に本症が出現することが多いです。頻度は少なくなりますが、この異常は降圧薬のニフェジピンやパーキンソン病の治療薬であるブロモクリプチンなどの薬の使用に関連していることもあります。また、骨髄増殖性疾患、高血圧、静脈不全、糖尿病、関節リウマチ、硬化性苔癬、痛風、脊髄障害、多発性硬化症の患者でもみられることがあります。

診断

症状と皮膚温の上昇に基づいて行います。家族性あるいは二次性の場合はその原因検索を行います。

治療

本症に対しては、温熱の回避、安静、四肢の挙上、冷却が治療の原則です。これらの治療法で症状が軽減し、発作が予防されることもあります。原因となっている疾患を特定できない場合は、ガバペンチン、プロスタグランジン類似体(例,ミソプロストール)、アスピリンなどが有効なことがあります。また、エフェドリン、メチセルジド、プロプラノロールなどの血管を収縮する薬も有効です。二次性の場合は原因疾患が特定できればその疾患を治療することによって症状は軽減します。骨髄増殖性疾患を伴う場合はアスピリンが有用なこともあります。

執筆:2011.5