03-3471-1013

診療
時間
10:00~14:00 / 15:00~19:00
※土曜日も診療 ※日曜・祝日休診

Cowden病

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

本症はgermline PTEN (phosphatase and tensin homologue detected on chromosome 10)遺伝子変異を認める常染色体優性遺伝疾患です。特徴的な皮膚病変と全消化管に過誤腫をきたします。

PTENはヒト染色体10q23.3に位置する癌抑制遺伝子であり、正常ではPI3K-Aktシグナル伝達経路を負に制御しており、PIP3 (phosphatidyl inositol-3-phosphate) をPIP2に脱リン酸化することで、細胞増殖の抑制やアポトーシスの誘導などを引き起こすと考えられています。しかし、本症ではPTEN遺伝子異常により、PIP3の産生が亢進してAktが活性化し、細胞増殖、細胞死抵抗性となり、良性腫瘍や発癌を引き起こしやすくなると考えられています。
本症では、80%の症例にPTEN遺伝子変異を認め、常染色体優性遺伝形式ですが、多くの症例は弧発性に生ずると考えられます。

臨床症状

皮膚の特徴的病変としては、1)顔面の外毛根鞘腫(意外と少ないとされます) 2)四肢の角化性丘疹 3)口腔粘膜乳頭腫 4)掌趾の点状陥凹 5)硬化性線維腫 などが挙げられます。
成人型Lermite-Duclos disease(小脳異形成神経節細胞腫)や巨頭症も特徴的です。
合併する悪性腫瘍として、乳癌(20-50%)、甲状腺(濾胞腺)癌(10%)、子宮内膜癌(5-10%)、腎癌、胃癌、前立腺癌、皮膚癌などがあります。
また、全消化管に大きさ数mmまでの過誤腫性ポリポーシスを高率に合併しますが、臨床症状を呈することは稀です。特に、食道の白色扁平ポリポーシスが疾患特異的です。
この他、良性腫瘍(甲状腺腫、乳腺線維嚢胞腫、脂肪腫、線維腫)、精神遅滞も屡伴います。

※上記症状は20歳後半までには90%の症例で認めるようになり、30歳代までには99%に粘膜皮膚病変が出現します。

予防

早期に確定診断して、その後の悪性腫瘍(乳腺、甲状腺、子宮内膜、腎臓など)の早期発見のために、定期健診が重要です。
18歳から尿検査を含めた検診を開始し、50歳からは大腸内視鏡が必要になります。また、18歳から男女ともに乳癌に対してのセルフチェックを開始し、25歳からは乳癌検診を行い、30歳前半からはマンモグラフィとMRIを開始します。甲状腺癌に対しても、18歳からエコー検診を行います。子宮内膜癌に対しては、30歳後半頃から吸引細胞診を行い、閉経女性に対しては、経膣エコーで経過観察します。

執筆:2011.5