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Proteus症候群

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

Proteus 症候群 (Proteus Syndrome)

本症は、様々な部位の非対称性な骨化過剰症(四肢・手足の巨大発育、頭蓋・顔面骨変形、椎骨・巨大脊髄異形成症など)、皮膚の過成長(結合織母斑、表皮母斑)、結合織の過成長(血管・リンパ管奇形、脂肪腫など)の様々な奇形を合併する、複雑で進行性の過誤腫性症候群です。
症状は一般的に出生時に存在し、その後も継続的・進行性で認められます。また、本症に卵巣嚢胞腺腫、様々な種類の精巣腫瘍、中枢神経系腫瘍、耳下腺単形性腺腫などの稀な腫瘍を時に伴うため、これらの症状がある場合は診断価値があります。
本症は、身体の細胞の一部に著明な遺伝子変異がみられ、その他の細胞にはみられないモザイク障害(mosaic disorder)として知られています。その変異は遺伝子に生じますが、親から引き継ぐ遺伝性のものではなく(孤発性)、胚が形成された後にいずれかの時点で自然発生するものであり、症状には大きなばらつきがみられます。

特異所見のカテゴリーは以下のA, B, C に分けられる。

A) 脳回状の結合織母斑
B-1) 線状表皮母斑
B-2) 非対称性の過成長
B-3) 10 代までに発生する両側卵巣嚢胞腺腫または耳下腺単形性腺腫
C-1) 脂肪腫あるいは局所的な脂肪欠損
C-2) 血管奇形(CM/VM/LM)
C-3) 肺嚢胞
C-4) 顔面奇形
A か、B の中の2 個か、C の中の3 個が揃えばProteus 症候群といえます。

原因

本症は AKT1 の体細胞活性化変異(1塩基置換;c.49G→A,p.Glu17Lys)に起因します。
AKT1遺伝子 (14q32.32-q32.33) は、細胞増殖に関与するシグナル伝達経路上のリン酸化酵素をコードし、癌遺伝子としても知られています。プロテウス症候群患者のほとんどで見つかったこの遺伝子の1塩基置換は非同義置換と呼ばれ、その遺伝子から作られる蛋白質のアミノ酸配列に影響を及ぼすため、患者の異常増殖組織から樹立した培養細胞では、正常細胞と比べてAKT蛋白質のリン酸化酵素活性が亢進しています。本症にみられる過成長と腫瘍感受性という特徴的な臨床所見は、 PI3K-AKT 経路の活性化が関与しているのではないかと考えられています。

治療

早期に本症の診断を確定し、重篤な症状を予防して早期治療すること基本ですが、複数の奇形が進行性に悪化するため、治療も限定的になり、治療が困難であることも多いです。
非対称性な骨化過剰症(四肢・手足の巨大発育、椎骨・巨大脊髄異形成症・側弯症など)は、整形外科的治療対象になります。頭蓋・顔面奇形・咬合異常に関しては、頭蓋顔面外科、形成外科や口腔外科で治療、皮膚の異常(結合織母斑、血管・リンパ管奇形、脂肪腫など)に関しては、皮膚科や形成外科で各疾患の標準治療(レーザー治療、外科的切除など)を行います。血栓症や二次的血小板減少症が生じた場合は、それに対する治療が必要な場合があります。
また、MRIなどで卵巣嚢胞腺腫、様々な種類の精巣腫瘍、中枢神経系腫瘍、耳下腺単形性腺腫、肺嚢胞や内臓内脂肪腫が発見される場合もあり、必要に応じて適宜摘除します。
いずれにしても、複数の様々な奇形があるために、多岐にわたる診療科によるチーム医療が必要です。

執筆:2012.6