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皮膚結核

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

皮膚結核(Cutaneous tuberculosis)

皮膚結核はヒト型結核菌 (Mycobacterium tuberculosis) が血行性またはリンパ行性、稀に外部から直接感染することによって発症する肺外結核の一つです。結核菌が直接皮膚に病巣をつくるものを真性皮膚結核 (true cutaneous tuberculosis)、結核菌に対するアレルギー反応による皮疹を結核疹 (tuberculid,id 疹)と呼びます。前者は病巣から結核菌が証明されるため感染力がありますが、後者は結核菌を検出できませんが、ツベルクリン反応はほぼ100パーセント陽性です。また、診断確定するためには、臨床症状ならびにツベルクリン反応強陽性や皮膚病理検索を行い、必要に応じて菌の分離やPCR 法も行います。

臨床的特徴や発症機序などから、さらに下記のように細分類されています。

1.真性皮膚結核 (true cutaneous tuberculosis)

a) 尋常性狼瘡 (lupus vulgaris)
症状

顔面・頸部や前腕に片側性に発症し、数個の赤褐色小丘疹が融合した紅斑局面で始まり、表面は落屑して中央は瘢痕化します。瘢痕の上に再発し、次第に拡大や融合を重ねて、大型、浸潤隆起性、弾性硬の局面を形成して醜い瘢痕になります。辺縁部には赤黄褐色の小結節が存在し、この部分を硝子圧法で観察するとリンゴゼリーの中身のような黄褐色の小粒がみられます。長年にわたり極めて慢性に経過し、陳旧性になると潰瘍や萎縮などを形成し、有棘細胞癌が発生することがあります。臨床経過から扁平斑状型、潰瘍型、増殖肥大型などに分類されます。現在では稀ですが、かつては真性皮膚結核では最も標準的な病型でした。

病因

皮膚以外の結核病巣(リンパ節、肺など)から血行性およびリンパ行性に生じると考えられ、最初に結核に感染したときの血行性播種で皮膚に病巣結節を形成し、その後再活性化することで発症します。

病理所見

真皮に類上皮細胞、Langhans 型巨細胞などから成る乾酪壊死を伴う結核結節を認めます。

診断

臨床的特徴、病理所見、ツベルクリン反応強陽性などで診断できることが多いですが、確定診断にはPCR 法による結核菌の同定・結核菌培養を行います。

鑑別診断

慢性円板状エリテマトーデス、局面型皮膚サルコイドーシス、梅毒(第3 期)、スポロトリコーシスなどが挙げられます。

治療

急な治療は急激な瘢痕化や循環不全をきたし、大きな潰瘍を形成する場合があるので注意が必要です。

b) 皮膚腺病 (scrofuloderma)
症状

真性皮膚結核の一種で,肺などから血行性・リンパ行性に結核菌が散布されて、骨・筋肉・腱などの病変が連続性に皮膚に波及することで生じ、淡紅色で無痛性の皮下結節〔冷膿瘍(cold abscess)〕として始まりますが、局所発熱や疼痛は少ないです。これが軟化して、やがて皮膚に瘻孔を形成し排膿します。この膿汁には多量の結核菌が存在し、感染原因となります。陳旧性になると潰瘍や特徴的な索状瘢痕などを形成します。
現在日本で最も頻度の高い真性皮膚結核で、頸部・体幹に好発します。

c) 皮膚疣状結核 (warty tuberculosis, tuberculosis verrucosa cutis)
症状

外傷部位などに結核菌が接種して発症するため、外傷を生じやすい四肢末端や関節背面や殿部などに好発します。数個の硬い小結節が融合拡大して疣状の紅斑性局面が形成され、遠心性に拡大しますが中心部は治癒傾向を示します。通常、皮膚の潰瘍化は生じません。獣医や飼育業者に多く発症するとされていますが、日本ではこのような感染経路はほとんどありません。

鑑別診断

尋常性狼瘡、クロモミコーシス、ウイルス性疣贅、股部白癬などが挙げられます。

d) 潰瘍性粟粒結核 (tuberculosis miliaris ulcerosa cutis et mucosae)
症状

肺結核、腸結核、腎結核、膀胱結核などの臓器結核から、結核菌が口腔・尿道・直腸肛門に付着し増殖して病変を形成します。丘疹から始まり次第に潰瘍や局面・壊死などの様々な皮膚病変が多発します。病変にはチーズ状の塊が厚く付着し、この中には極めて多くの結核菌が存在します。この疾患がある患者は概して末期の結核患者であり、ほとんどが死亡します。現在日本でこのような病変を見ることは稀です。

e) 急性皮膚粟粒結核 (tuberculosis cutis miliaris disseminata)
症状

結核性敗血症である粟粒結核の皮膚病変であり、小児に好発しますが、現在日本でこのような病変を見ることは極めて稀です。丘疹・紅斑・潰瘍・紫斑・壊疽などの多彩な症状が全身に多発します。

2.結核疹 (tuberculid)

a) 丘疹壊疽性結核疹 (papulonecrotic tuberculid)

結核に対するアレルギーによって生じる血管炎で、結核疹の一種です。青年の四肢伸側(特に肘頭や膝窩)に好発し、1cm大までの大きさの暗紅色丘疹が対側性に多発し、その後発疹の中心部が壊死・膿疱・潰瘍を経て瘢痕治癒します。このような皮疹が次々と出現し、新旧の皮疹が混在した状態で慢性の経過を辿りますが、予後は良好です。

b) 腺病性苔癬 (lichen scrofulosorum)

結核の初感染ないしBCG 接種後に、主に若年者の胴体や四肢に発症します。自覚症状のない扁平苔癬に似た粟粒大の紅色丘疹が、膿疱を伴って散在性あるいは集簇性に多発します。病理組織学的には、真皮において類上皮細胞とLanghans 型巨細胞を認め、肉芽腫性病変を形成しますが、乾酪変性はなく結核菌も検出されません。これも結核疹の一種と考えられています。

c) 陰茎結核疹 (penis tuberculide)

男性に限定して発症する結核疹であり、腎結核や膀胱結核など泌尿器系の結核に続発・合併することが多いです。亀頭・包皮にやや米粒大より小さな丘疹が発生して、膿疱・潰瘍を経て、亀頭部の形状が不整形の凹凸となり、醜い瘢痕となります。

d) バザン硬結性紅斑 (erythema induratum Bazin)

結核疹の中では最も多く、皮膚結核全体でも最も症例数が多いです。足が太い若い女性の下腿に多く、最大でも鶏卵よりやや小さい紅斑として発症します。紅斑は硬くなりやがて深い潰瘍となり、1~2ヶ月の経過で瘢痕治癒しますが、自覚症状はありません。皮下組織に発症した結核性肉芽腫性脂肪織炎が本態です。バザン硬結性紅斑では非結核性の症例も比較的多く報告されているため、鑑別が必要です。

e) 結核性結節性紅斑 (erythema nodosum)

結節性紅斑は細菌アレルギーが原因で発症する皮膚疾患の一つですが、結核も主要な原因の一つです。バザン硬結性紅斑に類似しますが、潰瘍を形成しないことが特徴です。

f) 結節性結核性静脈炎 (phlebitis et periphlebitis tuberculosa nodosa)

亜急性に発症し、発熱や倦怠感といった前駆症状を伴うことがありますが、多くは無症状で四肢に皮下硬結を生じますが、自覚症状はありません。

治療

真性皮膚結核・結核疹ともに、肺結核に準じた抗結核剤による治療が行われ、治療によく反応します。難治例で限局性の場合は外科的治療も行われることもあります。

執筆:2011.6