Qスイッチ・ルビーレーザーの原理
Qスイッチ・ルビーレーザーはメラニンによく吸収されるため、正常皮膚の損傷を最小限に抑えながら患部メラニンを有する細胞のみを選択的に破壊し、アザ治療を行います。また、Qスイッチ・ルビーレーザーの照射時間はとても短い(25
x 10-9 秒)ため、正常組織には熱による損傷を与えることなく治療ができます。この両者の性質を利用して、ほとんど瘢痕を残さずに皮膚真皮中のメラニン含有細胞やメラニン顆粒を選択的に破壊します。
真皮メラノサイトーシス
a) 太田母斑:生後まもなくあるいは思春期頃に、片側の顔面(眼瞼周囲、額、頬、鼻)にかけて生じる青褐色斑です。黄色人種の女性に生じやすく、頻度は0.1〜0.2%とされています。また、特殊な類縁疾患として、成人になってから両側眼瞼周囲に点状あるいは斑状に生じる遅発性両側対称性太田母斑があります。従来はドライアイス療法や皮膚移植などの治療が行われていましたが、整容的に満足できるものではありませんでした。現在では瘢痕をほとんど残さないQスイッチ・ルビーレーザー治療が太田母斑の第一選択となっています。遅発性両側対称性太田母斑も同様の治療になりますが、照射後に炎症後色素沈着が生じることが多いため、後療法が必要です。
(治療の詳細:初回治療では極端に色調が薄くなることは少なく、むしろ炎症後色素沈着のために一時期は濃くなることがあります。その後3-6ヶ月毎にレーザー治療を継続しているうちに、色調が確実に薄くなっていくことを実感できます。しかし、治療回数をかなり要するため、「根気との戦い」になります。)(乳幼児の場合は自制がきかないため、全身麻酔が必要になります。当院では局所麻酔のみの対応になりますので、必要に応じて然るべき医療機関へご紹介致します)
b) 伊藤母斑:生下時あるいは幼児期に、肩から上腕にかけて発症する青褐色斑です。太田母斑と同様、Qスイッチ・ルビーレーザーの治療適応ですが、レーザー治療に痛みを伴うので小児の場合は全身麻酔が必要です。
c) (異所性)蒙古斑:蒙古斑は乳幼児の臀部に生じる青色斑ですが、小児期には通常消失します。時に四肢・背部・腹部などに生じて消失しないものが異所性蒙古斑です。
表在性色素性疾患
a) 老人性色素斑:中高年齢者の顔面、手背から前腕などの日光露出部位に発生しやすく、境界明瞭な円形や楕円形の褐色斑を呈し、単発あるいは多発することもあります。日光の反復照射や紫外線刺激により皮膚表皮のメラニン産生細胞はメラニン色素を産生しますが、表皮細胞の老化に伴いメラニン色素を分解する能力が低下しているため、メラニン色素が沈着してしまう病態と考えられています。従って、予防には遮光が重要です。治療は、レーザー療法、ケミカルピーリング、液体窒素による凍結療法などがあり、いずれの方法もある程度の効果は期待できます。しかし、炎症後色素沈着(一時的に色調の増強)が生じることが多いので、治療後も後療法が必要になります。
b) 雀卵斑:いわゆる“そばかす”と俗称されるものです。5-6歳頃より、両側下眼瞼から頬にかけて生じる多発性の小褐色斑です。紫外線にあたると色が濃くなります。
c) 扁平母斑:先天的に表皮基底層のメラニン量が周囲の正常皮膚より多いために、境界鮮明な扁平な茶褐色(ミルクコーヒー色)斑として日常診療でもよくみられます。一般的に茶アザと呼ばれているもの大多数は扁平母斑ですが、酷似する茶アザで異なる疾患もあるので、専門医に診断してもらう必要がある場合もあります。扁平母斑に類似して、ベッカー母斑と呼ばれる疾患があり、これは思春期頃より片側性の胸・肩・上腕や背中などに発症することが多く、有毛性です。Q-スイッチルビーレーザーで扁平母斑症例の約3割程度が治療に反応して消失しますが、約7割は再発してしまうのが現状です。(治療の詳細:臨床所見や組織検査からレーザーに対する反応性が予測できないため、テスト照射をごく一部の範囲に行います。3-6ヵ月後にレーザーの効果があれば、患部全体に照射します。)