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品川シーサイド皮膚科形成外科クリニック
 
 

多毛症

■多毛症の種類
多毛症には、アンドロゲン非依存性で、性別に関係の無い、軟毛(体毛)の過剰発育であるHypertrichosisと、アンドロゲン依存性で、軟毛の肥大化と硬毛を伴う男性型多毛症Hirsutismがあり、両者が混在することも多い。
一般に、女性における多毛症は後者を指し、アンドロゲン依存性の硬毛の発育過剰であり、アンドロゲン感受性の高い部位(顔面、胸・腹部、腋窩、上肢、背、臀、大腿、恥骨)に生じる。


■男性型多毛症の原因
特発性多毛症と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が、男性型多毛症の90%以上を占め、その他の疾患は比較的稀であるが、アンドロゲン過剰産生腫瘍(卵巣、副腎、下垂体)などもあるので、鑑別診断は重要である。
以下に、原因疾患を列挙した。

特発性
多毛以外の男性化徴候を認めず、疾患を伴わない原因不明のものである。通常、血中アンドロゲンは正常範囲内である。アンドロゲン受容体の感受性亢進や5α還元酵素活性上昇などが原因とされている。多毛症の中で最も頻度が高い(約5割を占めると考えられている)。
これ以外の原因があるものを続発性と呼称する。

続発性
1.卵巣性
主に多嚢胞性卵巣症候群とアンドロゲン産生卵巣腫瘍であるが、混合型性腺形成不全や真性半陰陽も挙げられる。
a) 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
  小さな嚢胞が卵巣に多数出現する疾患で、黄体化ホルモンの異常分泌によって卵巣間質でのアンドロゲン産生が増加する。そのため、多毛症を含めた男性化徴候が現れると考えられる(多毛症全体の約4割を占める)。→詳細
b) アンドロゲン産生腫瘍(Sertoli・Leydig細胞腫、脂質細胞腫瘍、莢膜細胞腫瘍、男性胚細胞腫など)
c) 混合型性腺形成不全
d) 真性半陰陽

2.副腎性
a) 先天性副腎過形成(11-hydroxylase欠損症、21-hydroxylase欠損症など)
b) アンドロゲン産生腫瘍
c) Cushing症候群

3.下垂体性
a) 末端肥大症
b) 高プロラクチン血症

4.薬剤性
薬剤による医原性多毛には、長期にわたるステロイドや黄体ホルモン投与で生じたり、下記のような薬剤で生じることがある。
Androgen, progestin, corticosteroid, danazol, diazoxide, minoxidil, penicillamine, cyclosporine, phenitoin, diphenylhydantoin, phenothiazine

5.生理的
ゴナドトロピンが一時的に分泌過多になり生じると考えられている。
思春期、妊娠、閉経。

6.その他
甲状腺機能低下症、晩発性皮膚ポルフィリン症、神経性食欲不振症など。
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■男性型多毛症の症状
アンドロゲン感受性の高い部位(口唇周囲、下顎、腋窩、胸・腹部、腋窩、上肢、背、臀、大腿、恥骨)に硬毛が多数出現するのが初期症状として認められる。
特発性の場合は多毛以外に症状はないが、続発性の場合は、引き続いて男性化徴候(にきび、月経異常、乳房萎縮、女性性器萎縮、陰核肥大、男性体型、低音声、禿頭)が出現してくることがある。この場合は、アンドロゲン産生疾患も考慮し、内分泌学的精査・治療が必要になる。


■男性型多毛症の検査
男性型多毛症ではアンドロゲン過剰があるため、以下のホルモン検査が必須である。
■血中アンドロゲン(Testosterone、DHEA-S)
■脳下垂体ホルモン(LH、FSH、Prolactine)
特発生多毛症では、上記検査で異常を認めない。
上記検査結果次第で、疑われる疾患の精査(追加ホルモン検査、MRI、CT、超音波エコー、染色体検査など)を行う必要があるので、続発性多毛症が疑われる場合は、高次病院へご紹介します。


■男性型多毛症の治療
アンドロゲン過剰産生の原因となる副腎、卵巣、あるいは下垂体に機能異常あるいは器質的異常が認められる場合、原因疾患に対する治療を行うことになる(保険適応)。特に明らかな異常を認めない特発性の場合は自費扱いになる。
薬物療法はアンドロゲン血中濃度を抑制するための対症療法が行われ、治療対象は特発性多毛症や多嚢胞性卵巣症候群などである。また、発毛周期が長いため、薬物投与の効果発現までに数ヶ月以上要し、薬物の投与期間は長期に及び、副作用の可能性もありえるので、定期的検査も必要になる。さらに、投薬中止により多毛症状は再発することが多いため、永続的効果を期待する場合はレーザー脱毛等による除毛になる。多毛が広範な場合は、薬物療法による全身投与と局所的脱毛をレーザー脱毛で併用するのが合理的である。

治療に使用される薬剤
挙児希望が無く妊娠の可能性のない場合は、経口避妊薬(低用量ピル)や抗アンドロゲン薬が頻用され、併用されることも多い。挙児希望の場合は、排卵誘発(不妊)治療が優先される。

1.スピロノラクトン
スピロノラクトンは降圧利尿剤として使用(100〜400mg/日)されているが、抗アンドロゲン剤としての効果もある。特発性多毛症や多嚢胞性卵巣症候群には、50mg/日で開始して徐々に漸増し200mg/日を上限とする。低用量であれば、利尿剤としての効果は少なく、血中カリウムやナトリウム濃度にもほとんど影響を与えず、副作用(頻尿、起立性低血圧、月経異常、乳房痛、倦怠感、胃潰瘍など)も軽微なことが多い。
本剤投与により無排卵性月経による不正出血が生じることが多いので、月経周期の4日目〜21日目に投与する。多毛の改善は3〜5ヶ月頃から認められ、70〜80%の症例で有効である。
尚、妊娠中の投与に関する安全性が確立していない(催奇形性の可能性)ので、性的活動のある人がこの薬を使用する場合は、避妊を徹底する必要がある。妊娠する可能性がある場合は、経口避妊薬を併用することが必要である。

2.経口避妊薬(ピル;合成エストロゲン+合成プロゲステロン)
ピルは、間脳下垂体系の分泌抑制による卵巣からのアンドロゲン産生・分泌の減少と、SHBG(sex hormone binding globulin)の増加により遊離型テストステロンが減少することで効果を発揮する。低用量ピルに含まれるlevonorgestrelはSHBGの上昇作用がより強く、中容量ピルと同等の効果を持つとされる。この他に、多嚢胞性卵巣症候群のLHを正常値に下げ、副腎性アンドロゲンも低下させる。
副作用発現率は25〜30%で、主な症状は悪心・嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、乳房痛、不正性器出血などがあり、重大な副作用に血栓症(肺、脳、網膜、心筋、四肢)があるので、初期症状が疑われたら中止する。

ピル服用禁忌:本剤の成分に対し過敵性素因のある女性、エストロゲン依存性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌など)、診断未確定の異常性器出血、血栓性静脈炎・肺塞栓症・脳血管障害・冠動脈疾患またはその既往、35歳以上で15本/日以上の喫煙者、前兆を伴う片頭痛、肺高血圧症または心房細動を合併する心臓弁膜症あるいは亜急性細菌性心内膜炎の既往のある心臓弁膜症患者、血管病変を伴う糖尿病患者(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、血栓性素因、抗リン脂質抗体症候群、手術前4週以内・術後2週以内・産後4週以内及び長期間安静患者、重篤な肝障害・肝腫瘍、脂質代謝異常、高血圧(中等度以上)、耳硬化症、妊娠中に黄疸・持続性掻痒症または妊娠ヘルペスの既往歴のある患者、妊娠または妊娠している可能性のある女性、授乳婦、思春期前の女性。

慎重投与:40歳以上、乳癌の家族歴あるいは乳房に結節、喫煙者、肥満女性、血栓症の家族歴、前兆を伴わない片頭痛、高血圧(軽度)、耐糖能異常、ポルフィリン症、肝疾患、心・腎疾患あるいはその既往のある患者、てんかん、テタニー。

3.その他の治療薬
a) フルタミド
本来は前立腺癌薬として使用されており、非ステロイド薬でアンドロゲン受容体で拮抗的阻害をして効果を発揮する。250〜500mg/日でスピロノラクトンと同程度の有効率である。用量が増えると、月経不順や無月経になることがある。妊娠初期に胎児奇形の可能性があるため、避妊するためにピルと併用する。
b) MPA(medroxyprogesterone acetate)
MPAは下垂体からのLHの分泌抑制と肝臓での代謝酵素誘導により、テストステロンの体内からの排泄を促進する。低用量ピルが内服できない場合に処方されることが多い。 副作用は経口避妊薬と同様であるが、抑鬱を生じることがある。
c) GnRH analogue (ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ)
この薬は下垂体ゴナドトロピン分泌を抑制して卵巣性アンドロゲン分泌を抑制するが、副腎からのテストステロン産生を抑制できない。また、長期使用により骨粗鬆症が生じるので、投薬休薬を繰り返すことになる。
d) 副腎皮質ホルモン
この薬は下垂体からのACTH分泌を抑制して、副腎皮質からのアンドロゲン産生分泌を抑制し、先天性副腎過形成に有効なことが多い。特発性多毛症や軽症のPCOSにも使用されることが有効率は低く、副作用も多い。
e) シメチジン
アンドロゲン受容体活性を阻害すると考えられているが、治療効果はあまり期待できないことが多い。
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■レーザー脱毛
多毛症に対する局所的脱毛には物理的療法(剃毛、脱毛クリーム・ワックス、電気脱毛など)があるが、永続的効果を期待するにはレーザー脱毛あるいは光脱毛が有効で、比較的広範囲を確実に治療できる。

尚、女性が主観的に訴える多毛においては、正常な内分泌環境下での正常範囲内の発毛状況と判断されることもありうるので、ご理解下さい。


■多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSはさまざまな排卵障害と特徴的な内分泌状態および卵巣の多嚢胞性変化を主徴とする病態で、思春期頃から生じることが多い。
1)月経異常(第1度無月経、希発月経、無排卵周期症、機能性出血、不妊など)
2)LH値高値、FSH値正常
3)超音波検査による様々な程度の両側卵巣の多嚢胞性変化

この他にも肥満(上半身型体脂肪分布)、多毛(男性化)、ざ瘡(にきび)、内分泌異常(血中アンドロゲン高値、LH-RHテストによるLHの過剰反応など)などを随伴することもある。
長期的には、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、動脈硬化、子宮内膜癌などを合併する可能性があるので、注意深い定期観察とその治療が重要となる。

治療
挙児希望の無い場合は、子宮内膜の過形成や子宮内膜癌予防のために、クロミフェン療法、低用量ピルなどで毎月定期的に月経を起こす。また、にきびや多毛に対しては低用量ピルとスピロノラクトンを使用する。
挙児希望のある場合は、クロミフェン療法単独あるいはhCG、副腎皮質ホルモン、ドパミンアゴニスト、インシュリン抵抗改善薬との併用を行う。これにて妊娠しない場合は、ゴナドトロピン療法や腹腔鏡下手術による卵巣表面の焼灼でや穿刺で自然排卵を誘発する。
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