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糖尿病とご飯と老化

2007年の推計によれば、わが国の糖尿病患者とその予備軍をあわせると、2210万人に達したと考えられています。糖尿病は、血管を初めとした重大な合併症(腎障害、眼の網膜症、神経症、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)を伴うことが広く知られていますが、最近、認知症や癌などのリスクを高めることが疫学調査でわかってきました。例えば、耐糖能異常があると、正常に比較してアルツハイマー病や脳血管性認知症を発症するリスクが2.5倍も高く、HbA1C(1ヶ月前の日常の血糖値の平均レベルを表す)値が7%では2倍、8%では3倍癌になりやすいと報告されています。また、糖尿病は脂肪老化と関連して老化促進の要因と推察されていますが、詳細はまだ解明されていません。 一方、1965年以降の40年間で、米の摂取量が半減し、肉類・乳・乳製品の摂取量が3倍に増えてきており、日本の食生活が急激に変化して欧米化してきています。このような欧米化した動物性脂肪の摂取量の増加と総摂取エネルギー量の増加が糖尿病の急増に関与しているのではないかと考えられます。

以前は「日本人のインシュリン分泌量は欧米人に比較すると少ないために、糖尿病になりやすい」と言われてきましたが、最近の研究では実際には決して分泌量は少なくないことがわかってきました。また、日本人では、脂肪の多い食事を摂取すると、筋肉や肝臓の細胞内に脂肪が溜まり易くなり、糖の処理をするインシュリンの働きが低下する体質を持つことが多いことが解明されてきました。つまり、わずかな過食や運動不足による軽度の肥満でも糖尿病になりやすいのです。外見上、小太りでぽっちゃり体型の人でも、実際食後血糖が高いことが高頻度に認められます。 しかし、筋肉や肝臓に溜まった脂肪も、低脂肪食や運動不足を改善することだけで、短期間で減量できます。つまり、日本人の体質は筋肉や脂肪に脂肪が溜まりやすいのですが、生活習慣を改善するだけで脂肪が少なくなり、糖尿病に至らずにすむのです。
糖尿病は初期には自覚症状がないため、いろいろな症状が出てきた頃には、既に重症になっていることが多く、放置しているとインシュリンを分泌する膵臓の機能が低下して、血糖コントロールが困難になってきます。従って、血糖値が少し高めになる初期の糖尿病の段階に生活習慣を見直して糖尿病を予防することが肝要です。

近年、ご飯を主食にして、野菜・大豆製品や魚などの低脂肪食で低カロリー型の日本型食事は、糖尿病を予防できる有力な手段として再認識されています。ご飯には「レジスタンス・スタ−チ」という消化に抵抗性のあるデンプンが含まれているために、小麦のパンと比較しても消化・吸収のスピ−ドが遅くなります。つまり、栄養の吸収が緩やかなので、血糖の急速な上昇がなく、膵臓のインスリン分泌にも負担をかけにくくなります。また、レジスタンス・スタ−チは分解されずに大腸まで到達するために、食物繊維と同じ働きをして、便通も良好になります。この他にも、食事の主食である炭水化物を極端に減らすと、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えてしまう危険性があり、ビタミン・ミネラルなどの重要な栄養素が不足する原因にもなります。ご飯の多量摂取は糖尿病を引き起こすので禁物ですが、炭水化物はご飯であれば毎食茶碗1杯程度を摂取することが推奨されています。また、玄米食にすると白米に比べて糖尿病になるリスクを低減できるとの報告もあります。

1980年代の日本の小児の2型糖尿病発症率は2人/10万人程度でしたが、最近では5-6人に跳ね上がっています。小児の2型糖尿病の最大の要因は肥満で、特に脂肪の過剰摂取によるものです。さらに、朝食を摂らなかったり、食べ過ぎ、間食の摂りすぎ、高カロリー飲料の摂取などの食生活の乱れも関与していると思われます。このような小児では、すでに脂肪肝や肝機能異常、脂質異常、高インシュリン血症などになっていることが多く、このような思春期肥満はそのまま成人肥満やメタボリックシンドロームに移行しやすいことです。このような小児には、食生活の改善が欠かせません。間食や高カロリー飲料の制限、揚げ物や肉類などを減量して、ご飯を主食にした低脂肪の日本型の低カロリー食事にすることで改善できます。そのためにも、家庭や学校で幼少時期からの「食育」の指導が重要です。

肥満傾向の人は、低脂肪食と摂取エネルギーを少なくして緩やかな減量(1-2kg/月程度)が基本ですが、バランスの取れた食事摂取を心がけて、炭水化物(主食)の極端な減量はしないような配慮が必要です。
農林水産省による食事バランスガイドは参考にする価値があると思いますので、下記のHPにアクセスして参照して下さい。

http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html